未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
74

山形県鶴岡市

山形県鶴岡市の山奥に位置する大鳥池に潜む、巨大魚タキタロウ。100年以上前から目撃情報が相次ぐが、正体は不明。体長1メートルとも2メートルともいわれ、その身は無類の美味と伝えられる。謎に満ちたタキタロウを追って、釣りの素人が現地を訪ねた。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.74 |10 September 2016
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山形県

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#1まずは釣具店を訪ねる

謎の巨大魚タキタロウが潜むと言われる大鳥池

 8月某日、雨上がりの夕方。渋谷の釣具店に入った僕は、店員さんに話しかけた。

 僕「すいません。ちょっといいですか。僕、釣りについてな~んにも知らないんですけどね」
店員「……は、はい」(不審げ)
 僕「今度、山形に釣りに行こうと思ってるんです。山奥に大きな池があって。大鳥池っていうんですけど」
店員「……え、ええ。大鳥池、知ってます」(まだ不審げ)
 僕「そこで釣りをするための道具が欲しいんですよね。何も持ってないので」
店員「……なるほど! 何を釣るんですか? やっぱり池だとブラックバスとか?」(買い物客だとわかってパッと顔が明るく晴れる)
 僕「イワナとかだと思うんですけど……」
店員「なるほど、イワナ!」
 僕「ただ、ちょっと普通のイワナではなくて……。2メートルぐらいあるかもしれません」
店員「……2メートル!?」(目がテン)
 僕「タキタロウっていうんです。謎の巨大魚って言われてて。漫画の『釣りキチ三平』にも出てくるんですが、知ってますか?」
店員「タキタロウ……ああ、聞いたことありますね」(苦笑)
 僕「タキタロウが釣れる道具をください!」
店員「……お客さん、釣りの経験は?」
 僕「あ、全くありません。20年以上前に一度、釣り堀に行ったことがあるぐらいで」
店員「……なるほど……」

 ここで考え込んだ様子の店員さん。数秒後、意を決したようにこう言った。

店員「わかりました。用意しましょう!」

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未知の細道 No.74

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。