この報道がきっかけで、朝日村が主体となり、NHKも加わって翌年の1983年から3年間にわたる大規模調査が始まる。
最初の2年は特に成果がなかったが、3年目、2カ所の沢の入り口に刺し網をかけたところ、体長70センチ、体重5.6キロ、メスの巨大魚がかかった。これが後日、専門家の鑑定で意見が割れたという魚だ。調査班は、この魚を朝日屋の2階でお披露目した後、試食した。佐藤さんは顔をほころばせる。
「イワナ系の魚、鮭、マスとか川魚は、産卵が終わると食べても美味しくない。でも、その時に取れた魚はたんぱくなんだけど脂がのっていて、すごく美味しかった」
タキタロウらしき魚が実際に捕らえられたのはこの時が最後だが、当時、魚群探知機で端から端まで探査したところ、20メートルから35メートルの間に100匹ほどの魚影が映し出された。それがNHK特集で放送されたことでタキタロウは一気に全国区になり、釣り人が訪れるようになったそうだ。
川内イオ