未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
74

山形の秘境・大鳥池で釣り糸を垂れる

伝説の巨大魚タキタロウを追って

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.74 |10 September 2016
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#2何から何までお世話になる

 この後、僕はやる気に燃えた店員さんに、釣り竿、リール、釣り糸、ルアーなどなど池での釣りに必要なあらゆるものについて、レクチャーを受けた。釣り具の説明だけでなく、どんなものを選んだらいいか、セッティングの仕方、使い方、どんな場所が釣れるのか、など本当に全てのことについて教えてもらった。
 途中で「同行者は?」と聞かれたので、「いません!」ときっぱり答えたら、一瞬、遠くを見つめていたけど、初めての人がリールに釣り糸を巻くのは難しいんですよ、と呟きながら、クルクルと巻いてくれた。

 気づけば1時間以上経っていて(たまたま、その時間、お客は僕しかいなかった)、店員さんの口調もだんだんとくだけてくる。
 店内には『釣りキチ三平』のイラスト入りルアーのガチャガチャがおいってあったので、お会計の時に、僕が「三平はタキタロウといい勝負をしてたから、景気づけに買っていきます!」と500円を入れてハンドルを回したら、出てきたのは世界一の天才釣り師、鮎川魚紳さんのイラストが入ったルアー。

初の釣りに向けて購入した4つのルアー

 実は、タキタロウを釣りに行こうと思い立ってから初めて『釣りキチ三平』を読んだレベルで、ぜんぜん詳しくない僕が、「お、ウオガミさんだ」と言ったら、0.5秒ぐらいの速度で「ギョシンさんです」と訂正された。
お会計は、しめて4万円弱。金額を見て作り笑いを浮かべる僕に、店員さんは言った。 「タキタロウ、ギョシンさんで釣ってきてくださいよ!」

僕が釣りグッズを購入した際のレシート
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未知の細道 No.74

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。