この後、僕はやる気に燃えた店員さんに、釣り竿、リール、釣り糸、ルアーなどなど池での釣りに必要なあらゆるものについて、レクチャーを受けた。釣り具の説明だけでなく、どんなものを選んだらいいか、セッティングの仕方、使い方、どんな場所が釣れるのか、など本当に全てのことについて教えてもらった。
途中で「同行者は?」と聞かれたので、「いません!」ときっぱり答えたら、一瞬、遠くを見つめていたけど、初めての人がリールに釣り糸を巻くのは難しいんですよ、と呟きながら、クルクルと巻いてくれた。
気づけば1時間以上経っていて(たまたま、その時間、お客は僕しかいなかった)、店員さんの口調もだんだんとくだけてくる。
店内には『釣りキチ三平』のイラスト入りルアーのガチャガチャがおいってあったので、お会計の時に、僕が「三平はタキタロウといい勝負をしてたから、景気づけに買っていきます!」と500円を入れてハンドルを回したら、出てきたのは世界一の天才釣り師、鮎川魚紳さんのイラストが入ったルアー。
実は、タキタロウを釣りに行こうと思い立ってから初めて『釣りキチ三平』を読んだレベルで、ぜんぜん詳しくない僕が、「お、ウオガミさんだ」と言ったら、0.5秒ぐらいの速度で「ギョシンさんです」と訂正された。
お会計は、しめて4万円弱。金額を見て作り笑いを浮かべる僕に、店員さんは言った。
「タキタロウ、ギョシンさんで釣ってきてくださいよ!」
川内イオ