未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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山形の秘境・大鳥池で釣り糸を垂れる

伝説の巨大魚タキタロウを追って

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.74 |10 September 2016
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#10初めての釣りで釣り上げたもの

釣り糸を垂れて、いっぱしの釣り人気分

 僕にとって初めての釣りは、魚ではなく、蚊との闘いだった。昼間は暑さで影を潜めていた蚊が、涼しくなって活発化したようだ。
 大鳥池に突然現れた、Tシャツに短パン姿の肉厚男は、格好の獲物だったのだろう。とんでもない数の蚊が、僕のもとに押し寄せてきた。
 慣れない釣りの準備に時間をかけていると、体中に蚊が群がってくる。時間が経つにつれて蚊が増えていく。
 耐え切れなくなり、一度、宿に戻って長ズボンをはき、上着を着た。

 これで大丈夫だと池に戻り、釣り糸を垂らすと、それだけでいっぱしの釣り人になった気がした。それも、一瞬だった。
 蚊は、肌が露出しているところをめがけて飛んでくる。その時、僕が露出していたのは顔だけ。視界に数十匹の蚊が飛び交って、「うわー!!」と悲鳴を上げて頭を振ったら、かぶっていた帽子が池に落ちた。

 ああ!!!

 お気に入りの帽子を放っておくことはできない。でも、水面は数メートル下にあり、手や棒で取ることは難しい。
 あ、釣り竿がある。釣り針にひっかけたら持ち上げられないかな?
 記念すべき僕の釣り初日は、帽子釣りになった。釣り糸を垂らし、針にひっかけようと釣竿を動かす。なかなかうまくいかなかったが、蚊に耐えながら粘っていたら、ついに引っかかった。慎重にリールを巻く。
 よし! 帽子が手元に戻ってきた瞬間、「今日は終わり!」と撤退した。

 その日、山小屋に泊まるのは僕ひとりだった。
 まともな食事を持参しなかった僕の夜飯は、アンパン、クリームパン、チョコレート。山小屋で他の登山者とわいわい交流することを妄想していたから、寂しさが募る。
 タキタロウ釣りのバイブルとして釣りキチ三平を持参していたので翌日に備えて読み直し、21時過ぎには就寝した。

タキタロウ山荘で孤独な夜を迎えた


未知の細道 No.74

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

二泊三日

最寄りのICから山形自動車道「鶴岡ICを下車
1日目
鶴岡駅から タキタロウ館 までドライブ(約70分)。道中の長閑な田園風景が美しい。
昼間の登山は大変なので、タキタロウ公園オートキャンプ場で1泊。
釣り堀で釣ったイワナを食堂で塩焼きにしてもらおう。
2日目
午前中に大鳥池へ。3時間~3時間半で タキタロウ山荘 に着く。到着後は大鳥池でひねもす釣り糸を垂れる。
夜はタキタロウ山荘で宿泊。食事や風呂がないので各自で準備する。
小屋主の佐藤さんに頼むと、タキタロウの話をしてくれる。
3日目
午前中も釣りを楽しむ。午後に下山。
汗を流したい人は、鶴岡駅前の第一ホテルで大浴場に浸かるのがおススメ。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。