未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
74

山形の秘境・大鳥池で釣り糸を垂れる

伝説の巨大魚タキタロウを追って

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.74 |10 September 2016
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#5資料がいっぱいのタキタロウ館

キャンプや釣りもできるタキタロウ館

 朝5時過ぎに家を出て、大鳥池まで最寄りの鶴岡駅まで約5時間。駅前で車を借りて、長閑な風景の中を1時間ほどドライブすると、大鳥池に向かう拠点になっている旅館「朝日屋」に着く。そこで遊漁券を購入してから、すぐ近くのタキタロウ館を訪ねた。
 タキタロウ館には、タキタロウに関する多くの資料が展示されている。1985年に捕獲された謎の巨大魚のはく製や、過去に釣り上げられた巨大魚の魚拓、撮影されたタキタロウらしき巨大魚のワイルドな表情を写した写真などがあり、いやがうえにも期待が高まる。

タキタロウの特徴はしゃくれた下あご。オスの方がいかつい顔をしているらしい

 タキタロウの顔はめパネルもあり、記念写真を撮りたくて、近くにいたおじさんに撮影をお願いしたら、スマホの操作がイマイチよくわからないらしく、なかなか撮ってくれない。首をかしげているので、大丈夫ですか? わかります? と尋ねると「大丈夫、だと思います……」と言うので、顔をパネルにはめこんだ間抜けな姿勢のまま、待つこと1分。夏休みらしき子どもたちが、指をさして笑っていたように見えたけど、きっと気のせいだろう。

 タキタロウ館には食堂もあるので、昼食におそばを食べて、お土産にタキタロウの手ぬぐいを買い、いざ出発と言う時に、ふと気になって、その日の夜に泊まるタキタロウ山荘の情報をスマホで確認した。
 あれれ! 「食事:無 」と書かれている。釣り具の購入や登山の準備に気を取られていて、山荘なんだからご飯ぐらい出るだろう、と気軽に考えていたから、冷や汗をかいた。

 その日の夜、翌日の朝と昼の3食分の食料を持っていく必要がある。
 さあどうするか。タキタロウ館で売っているのはお土産用のお菓子のみ。そこで僕は羊羹やせんべいなどを大量に買い込んだ。さらに、タキタロウ館の隣にある昔ながらの商店で、菓子パンを4つ購入。これで食いつなぐことにして、山に向かった。


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未知の細道 No.74

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。