この話を聞いて、「友森シェフの料理、食べてみたかった……!」と思う人は僕ひとりではないだろう。地元の映画館とレストランのコラボのなんと魅力的なことか。上映前の解説もそうだが、ただ人知れぬ名作をキュレーションするだけでなく、最大限に映画を楽しんでもらうために、手を尽くす。それが、東座代表のおもてなしだ。
その熱い思いは、確実にお客さんに届いている。
仰天する実話のエピソードが満載で、物書きを生業とする僕にとってはかなり刺激的だった『トランボ』を見終えた後、ほかのお客さんに話を聞いてみて驚いた。
「3、4年前から通っている」というふたりの女性、酒井さんと中原さんは車で1時間半ほどかかる伊那市から来ていた。地元の友人から東座の存在を聞いたというふたりは、「気になっていた映画や、新聞とかの映画評に取り上げられていた地味な名作を取り上げてくれるので、とても気に入っています。ここがないと困りますね」と笑顔で語ってくれた。
もうひとりの女性、牛山さんは車で40分ほどかかる諏訪から来たという。今回の『トランボ』が3度目の東座で、「普通の映画館と雰囲気が違って、面白いですよね。居心地がよくて好きです」とのこと。
塩尻の隣りの松本市から来たという男性、横山さんは、東座についてこう語る。
「新聞で東座を知って、3、4年前から観にようになりました。タウン誌で合木さんのコラムも読んでいますよ。映画好きにとって東座は貴重な存在だから、地元の人間が盛り上げていかなきゃいけないと思いますね」。
川内イオ