未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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映画ファンを引き寄せる塩尻のレトロ映画館

東座の舞台裏奮闘記

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.83 |25 January 2017
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#12『トランボ』を観に来た人たち

上映会が終わった後は、次回作品のチェック

 この話を聞いて、「友森シェフの料理、食べてみたかった……!」と思う人は僕ひとりではないだろう。地元の映画館とレストランのコラボのなんと魅力的なことか。上映前の解説もそうだが、ただ人知れぬ名作をキュレーションするだけでなく、最大限に映画を楽しんでもらうために、手を尽くす。それが、東座代表のおもてなしだ。
 その熱い思いは、確実にお客さんに届いている。

 仰天する実話のエピソードが満載で、物書きを生業とする僕にとってはかなり刺激的だった『トランボ』を見終えた後、ほかのお客さんに話を聞いてみて驚いた。

「3、4年前から通っている」というふたりの女性、酒井さんと中原さんは車で1時間半ほどかかる伊那市から来ていた。地元の友人から東座の存在を聞いたというふたりは、「気になっていた映画や、新聞とかの映画評に取り上げられていた地味な名作を取り上げてくれるので、とても気に入っています。ここがないと困りますね」と笑顔で語ってくれた。

 もうひとりの女性、牛山さんは車で40分ほどかかる諏訪から来たという。今回の『トランボ』が3度目の東座で、「普通の映画館と雰囲気が違って、面白いですよね。居心地がよくて好きです」とのこと。

 塩尻の隣りの松本市から来たという男性、横山さんは、東座についてこう語る。

「新聞で東座を知って、3、4年前から観にようになりました。タウン誌で合木さんのコラムも読んでいますよ。映画好きにとって東座は貴重な存在だから、地元の人間が盛り上げていかなきゃいけないと思いますね」。

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未知の細道 No.83

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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