未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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映画ファンを引き寄せる塩尻のレトロ映画館

東座の舞台裏奮闘記

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.83 |25 January 2017
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#11神戸からの来客

こずえさんが独自で作成している塩尻のマップ。上映会と同じく、こだわりを持ってセレクト

 昨夏、「世界ベストレストラン50」の第1位に4度も選ばれたデンマークの名店noma(ノーマ)のドキュメンタリー『ノーマ、世界を変える料理』を上映した時は、こずえさんの発案で、以前から懇意にしている塩尻のフレンチレストラン「ラ・メゾン・グルマンディーズ」とコラボレーションをした。

 こずえさんが「映画のなかの料理を再現してもらえませんか」と企画を持ちかけたのだ。そのとき、オーナーシェフの友森隆司さんは「難しいな、これは……」と言いながら、サンプルのDVDを朝まで見て、できると確信。

 そこでこずえさんは配給会社に、こういう企画をやるから宣伝してほしいと連絡をしたところ、配給会社から「それは無理でしょう。ノーマのぶ厚いレシピがあるので、料理を指定してくれたらコピーしてレシピを送ります。それをシェフに渡してください」と言われたそうだ。

 配給会社の気持ちもわかる。世界一のレストランの料理を再現してというこずえさんの依頼はほとんど無茶ぶりで、塩尻というより日本全国でも再現できる人は少ないだろう。ところが、友森さんは「レシピなんていらない」と断り、欧州でしか手に入らない食材は地元のもので代用して、自力でノーマの料理を完璧に再現して見せた。
 これには、東京の配給会社も驚嘆したそうで、うわさを聞き付けた神戸のフレンチレストランで働くシェフが東座までやってきて、映画を観た後、ラ・メゾン・グルマンディーズに向かったそうだ。

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未知の細道 No.83

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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