未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
72

投げて、祈って、抱きしめて!

神の島・金華山で金運開運奮闘記!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.72 |10 August 2016
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#8再び神のお使いに出会う

山に入って間もなく、この道なき道を進むことになる

 登り始めてすぐに、これは簡単じゃないぞと気づいた。震災で崩れた岩や石が散乱していて、道なき道を進まなければならないのだ。
 木の棒を拾って杖にして、山を登っていく。その日、宿泊する参拝客は僕しかいないと言われていたから、今この瞬間、神様の宿るこの山に登っているのは僕ひとり。そう考えると、なんだか神聖な気持ちに……ではなくて、おれ、大丈夫かな? という不安が湧きあがってきた。なぜなら、運動不足と腹の出っ張りが甚だしく、全く山に慣れていないから。

 しかも、その日は夏のような日差しでかなり暑い。山に入ってから20分もすると息が荒れ、大量の汗が流れ落ちてきた。
 暑い、ツラい、足が重い……。早くも泣きごとが頭の中を埋め尽くし始めたその時! ウネウネウネ~っと目の前を何かがよぎった。
 おお!!! なんとまた蛇が現れた!!!
 僕は、数秒前の弱気が嘘のように目をぎらつかせて、蛇の写真を撮った。
 頭の中がシンプルな僕は、こう思った。
「弁財天様が、僕を待っている!」
 完全に気持ちが切り替わった僕は、登山家になったような気持ちで山にアタックした。

 途中には、境内にあった木よりももっと大きなこぶをつけた木があり、そこで存分に頭を擦りつけた後に、休憩を取った。
 さらに登ると、「清水石」と書かれている場所があり、ひしゃくが置いてある。よくよく見ると、石の脇からコンコンと水が湧きだしていた。すくって飲んでみると、これがまた冷たくてめちゃくちゃ美味い! ごくごくと喉を鳴らしながら、3杯は飲んだ。

 リフレッシュした僕は、ぐんぐんと急な山道を登っていった。すると、一気に視界が開けて、目の前には牡鹿半島を臨む絶景!
 そこから頂上まではあと少し。気合いを入れ直して、サミットプッシュ!
 歩き始めてから1時間10分、頂上にたどりつき、無事、弁財天様にお祈りができた。
 船長から聞いた「神様に願いことをする時は、どこの誰なのか、どんな願い事なのか、具体的にきちんと伝えることが大切です」という言葉を思い出し、住所氏名から念入りに。

頂上にある大海祇(おおわたつみ)神社。ここに祭神の大海祇神と弁財天が奉られている
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未知の細道 No.72

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。