未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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投げて、祈って、抱きしめて!

神の島・金華山で金運開運奮闘記!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.72 |10 August 2016
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#11禰宜(ねぎ)に聞く震災と復興

参集殿はお籠り(おこもり)する宿泊施設のため、部屋にテレビはない。でも、シンプルで居心地の良い部屋だった

 参集殿という黄金山神社が運営する宿にチェックインし、入浴。金運開運ギラギラモードを静めて、黄金山神社の禰宜(ねぎ)、金華山で暮らして28年になる西村強さんに話を聞いた。

 ——金華山は東北三大霊場と言われていますが、どのような場所なのでしょうか?
「出羽三山、恐山、金華山が東北三大霊場です。金華山は島そのものが霊山で、昔から信仰の対象になってきました。昔でいえば、山伏や行者が霊力を高める修行の場所で、今の言葉でいうとパワースポットですね」

 ——定期船の船長は、震災の時に「女川は金華山に守られている」と感じたそうです。
「金華山は震源地から一番近い場所で、私もここにいましたが、揺れ方が尋常じゃなかった。海を見ていたら、潮がすごい勢いで引いていって、海の底の土が見えて、モーゼの十戒みたいな感じでした。この世の出来事ではなく、CGでも見てるのかなという気持ちになりました。津波も桟橋にある鳥居の上まで来たんですが、職員もお参りの方も、みんな無事で、大きなケガをした人もいなかった。やはり、神様に守られたのかなと思いますね」

——震災の時は、どんな状況だったのですか?
「島には寮があって、職員やお手伝いの方が住んでいますし、お詣りの方もいたので、そのまま神社の広間が避難所になりました。島に出入りするのは大変になりましたが、宿泊施設をやっていたので、ガソリンや灯油、ガス、布団もあったし、信者さんから奉納されたお米や食材もたくさんあったし、水は山からきれいな水が湧いているので、避難所としては恵まれていたと思います。
 ただ、桟橋が地盤沈下して、道が崩れて、灯篭や頂上のお社も倒れたり、宿泊所のお風呂もぐちゃぐちゃになって、ここにお客さんを泊めるのは二度と無理だなと思いました」

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未知の細道 No.72

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。