船長の話で特に印象に残ったのは、東日本大震災の時の話。地震発生直後、船に乗ってなんとか沖に逃げた船長は、40メートルを超えるような津波が港に向かうのを、茫然と見守るしかなかったそう。結局、人口1万人の女川町は死者行方不明者が1,000人を超える壊滅的な被害を受けたのだけど、船長は「津波が町に到達するときには、高さが20メートルほどに下がっていた。金華山が守ってくれたのだと思う。9,000人も助かったのは、奇跡でしょう」と真剣な表情で語っていた。
パワースポットを巡って金運アップ! と調子に乗っていた僕は、船長の「復興どころか、まだ復旧もしていない。女川は人口減少率が全国一(※2015年は37%減)になり、金華山の参拝者は最盛期には50万人いたけど、今は1、2万人に落ち込んでいる」という話を聞いて、震災から5年後の現実に、悲しいような、申し訳ないような気分になった。
でも、さすが船長、乗客のテンションを上げることも忘れていない。震災の話が終わると、パッと切り替えて盛り上げる。
「金華山といえば、金運開運、商売繁盛の神様! 皆さん、お金持ちになりたいでしょう。『3年続けてお詣りすれば、一生お金に不自由しない』と言われていますが、実際にいました。この船をよく利用されている仙台の30代の女性の方、一昨年、『当たりました!』と言ってくるんです。何かと思ったら、サマージャンボ7億円! 驚きましたねえ!」
この話を聞いた瞬間、ツアーの雰囲気がパッと輝いたように感じたのは気のせいではないだろう。色で表すなら、もちろん黄金色だ。
川内イオ