未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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片道10時間の道程が前菜になる焼尻島

北の離島で世界一の羊を焙る。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.120 |10 August 2018
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#9モーニングバーベキュー

4時に起きて日の出のなかで羊を撮影。

 翌朝は、4時に起きて日の出のなかで羊を撮影。テントに戻って二度寝した後、牧場に行って7時から始まる羊舎の掃除とエサやりを見学。

 お腹が空いた頃合いで、港に向かった。この日は10時30分から祭りが始まっていたから、朝食バーベキューだ。今回は焼尻サフォークに加えて、焼尻島のまわりで採れたというウニ(中型1個300円!)もふたつ購入し、前日と同じ海沿いの席で一緒に焼いた。「あ~美味い……」「これはヤバい……」とひとりで呟きながら、あっという間に完食。これほど贅沢なモーニングセットがあるだろうか! いや、ない。
ほかのお客さんは、どう感じているのだろう? 焼き台をまわって話を聞いてみた。

焼尻サフォークとウニ。僕の人生で最高峰の朝食だった。

札幌からきた「2年連続、2回目」という女性ふたり
 「混んでなくて、美味しいものがたくさんあって、気分転換に最適な島ですよね。ジンギスカンはよく食べますけど、サフォークを食べられるところはあまりないんです。やっぱり美味しいですね。別物です」

 「臭みがあるのが普通の羊で、それはそれで好きなんですけど、臭いからタレをつけるじゃないですか。ここの羊は臭みがなくて、羊であって羊でないという感じ」

札幌からきた女性と子どものグループ
「私は三回目です。ここの羊は甘みを感じますよね。一般には流通してないのがもったいないと思います。また来たいですね」

 「私は初めて。ずっときたかったんです。臭みがないから、塩を振って食べるのが一番おいしい。札幌からくる価値あります」

 札幌から来たという人はほかにもいた。札幌は日本屈指の美食の町で、美味しい羊肉を食べられる店なんてたくさんありそうだ。それなのに、長距離バスと船に乗ってわざわざ焼尻島に来ている。それだけ焼尻の羊肉が特別ということだろう。

札幌からきた女性と子どものグループ。
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未知の細道 No.120

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。