羽幌町としても、税金を投じて飼い始めた羊をどうにかしないといけないという思いがあったのかもしれない。町の職員を焼尻島に送り込み、1966年、「町営焼尻めん羊牧場」を設立。翌年には、羊毛、羊肉兼用で、顔と四肢が白いコリデールという種類の羊が104頭、導入された。
現在、牧場にいる羊肉専用で顔と四肢が黒いサフォーク種がやってきたのは1969年。100頭がオーストラリアから輸入されたという。立ち上げ当初は、二種類の羊が混在する牧場だったのだ。
こうした事業拡大の背景にあるのは、昭和30年代の「ジンギスカン」ブーム。当時、全国に百万頭以上の羊がいたという記録が残っており、羽幌町もこの波に乗ろうとしたのだろう。羊肉専用のサフォーク種だけの飼育に切り替わったのも、この時期だ。1986年には、北海道めん羊協会によってサフォーク種第1号純血生産基地に指定されている。
しかし、方向転換を強いられた。提携していた札幌の某スキー場が倒産し、肉の卸先を開拓する必要が出てきたのだ。そこで当時の町や牧場の職員が、少ない頭数で利益を上げるために富裕層をターゲットにした新たな戦略に取り組んだそうだ。
川内イオ