未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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投げてこすってカーリング体験記

私を常呂に連れてって!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.106 |25 January 2018
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#10常呂町の底力

小学生向けの体験会の講師も白畑師匠。常呂カーリング倶楽部は小学生への普及に力を入れている。

 小栗さんは昨年、亡くなってしまったが、1980年から37年間、まき続けてきた種はしっかり実り、常呂町では1部から5部まで計42チームによるリーグ戦が行われている。授業でカーリングを学ぶ常呂町の子どもたちのレベルも高く、今年の1部リーグでは、中学生チームが初優勝。僕が取材に訪れた日には、小学生向けの体験会が行われ、40人ほどが参加していた。そのなかのひとり、小学6年生の女の子の言葉を聞いた時、僕はカーリングのパイオニアとして駆け抜けて、いや滑り抜けてきた常呂町の底力を感じた。

「お姉ちゃんが小栗さんにスカウトされたのがきっかけで、私も小学校2年生から始めました。小栗さんに教えてもらったことで印象に残っているのは、ストーンはぜんぶ同じように見えるけど、ひとつひとつに個性があるから個性をうまく活かしてやってほしいと言われたことです。お姉ちゃんはいま中2ですけど、高校に入ってからもずっとカーリングをやるつもりみたいだし、私も中学校に入ってからも続けようと思っています。お姉ちゃんと一緒に、五輪に行きたいなと思っています」

小学生向けの体験会の様子。みんな既に上手い。

 ちなみに、リーグ戦に参加している選手の最高齢は82歳の女性。最近、その女性のチームに30代でカーリング未経験の選手が加入したため、午前中、カーリングホールで一緒に練習しているそうだ。80代と30代の選手が一緒に練習できるスポーツって、なかなかないと思う。それに、そういう風景が日常にあること自体がめちゃくちゃ素敵じゃないですか! 取材を終えるころ、僕はもうすっかりカーリングと常呂町のファンになっていた。

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未知の細道 No.106

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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