未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
106

投げてこすってカーリング体験記

私を常呂に連れてって!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.106 |25 January 2018
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#5リンクに響くうめき声

白畑師匠のデモンストレーション。まっすぐに伸びた右足が美しい。

 次は、ストーンを投げるためのフォームの練習。最初に、陸上競技のスターティングブロックと同様のブロックに利き足を乗せる(僕は左足)。イチで腰を上げ、ニでスライダーを付けた軸足を前に出し、サンでその足を軽く引き、ヨンでブロックを蹴りながら、再び軸足を前に出す。その際、前に出した軸足に体重を乗せ、背筋を伸ばして視線も前方へ、もう片方の足は後方にピンと伸ばし、つま先を氷にのせる。

 白畑先生のお手本を見ると、すべての動作が滑らかで美しい。一切の無駄がない。その動きを真似ようとするんだけど、これがまた笑えるぐらいにぜんぜんできない。先生のように後ろ足をピンと伸ばそうとするのだけど、身体が固くて低い姿勢が保てず、腰が上がってしまい、バランスが崩れてしまうのだ。何度かチャレンジしたけど、先生から「いい感じです!」と言われたのは1回だけだった。トホホ……。

 時間が限られているので、ある程度の形を教えてもらったら次のステップに進む。今度は実際にストーンを投げてみる。ストーンはひとつ20キロあり、上部にハンドルがついている。そのハンドルを利き手で握り、足で蹴って滑り出した勢いに乗った状態でそっと送り出すのがコツ。

 左手の場合はハンドルを「10時の方向」で握り、手を放すタイミングで「12時の方向」に少し動かす。そうすると、ストーンが回転し、ゆっくりと弧を描くようにしてハウス(ストーンを投げ入れる同心円)に向かう。……ということなんだけど、そもそも蹴りだした時の姿勢が安定していないうえに、手を放すときにどうしても力んで、ストーンが回転し過ぎたり、勢いがよすぎたりして、まったくハウスのなかに収まらない。軽く、柔らかく、繊細に、と意識すると、今度はハウスに届かない。10回以上投げて、ハウスのなかにおさまったのは1回のみ。

師匠の姿勢と比較すると全く違うことがわかる。そもそも後ろ足が1ミリも伸びていない。

 実際の競技では、ハウスの中心に一番近いストーンがあるチームに得点が入るので、ハウスのなかに収めるのが基本中の基本なんだけど、我ながら完全に戦力外! あー! とか、うー! と呻き、頭を抱えながら、カーリングの難しさを体感した。

(カーリングの詳しいルールを知りたい方は、常呂町のカーリングチーム「ロコソラーレ」のホームページにある解説がわかりやすいので参照してください)
http://www.locosolare.jp/curling/curling.html

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未知の細道 No.106

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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