未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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投げてこすってカーリング体験記

私を常呂に連れてって!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.106 |25 January 2018
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#8ひとりの男が見た夢

NPO法人常呂カーリング俱楽部の事務局長、鈴木繁礼さん。初代会長の小栗さんとともに常呂町のカーリングを盛り上げてきた。

 キーマンは、常呂カーリング協会初代会長の小栗祐治さん。北海道とカナダのアルバータ州が1973年に姉妹提携を結んだのが縁で、北方圏のスポーツを導入しようという動きのなかで、1980年1月、北海道の池田町というところでカーリングの講習会が行われた。

 カーリングの発祥は15世紀のスコットランドと言われているが、カナダで人気を集め、アイスホッケーに次ぐ冬のスポーツとしての地位を確立している。姉妹提携した国の人気スポーツを取り入れようというわけだ。この講習会に参加し、「これは面白いスポーツだ」と思った小栗さんは常呂町でチームを結成。同年、協会も立ち上げた。

 ちなみに、役場職員だった鈴木さんも小栗さんに声をかけられてカーリングを始めたものの、当時はもちろん屋内施設などなく、屋外でプレーしていたので「寒いし、楽しくなかった(苦笑)」そうだ。しかし、小栗さんの情熱はサロマ湖から吹きつける寒風を寄せ付けないほどに燃え上がり、「五輪競技にする」と断言して、周囲をどんどんと巻き込んでいった。1984年には、常呂町のメンバーがカナダ遠征をしている。鈴木さんは、こう振り返る。

「五輪なんて、僕たちからしたら『なに言ってるの?』という感じでしたし、カーリングもすぐに忘れ去られるんだろうなと思っていたんです。でも、小栗さんみたいに熱い人がいることで町ぐるみでカーリングが盛り上がっていって、1988年に初めて屋内のカーリング専用リンクができたんですよ」

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未知の細道 No.106

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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