未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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酪農女子と5頭の牛の新たな物語

幸せな牛のやさしいミルク

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.125 |9 November 2018
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#5大野山との出会い

 なかほら牧場で過ごすうちに、就活からは完全に心が離れた。美味しい乳製品を作りたいという思いは変わらなかったからこそ「ここで働きたい」と思った。その思いを伝えると中洞さんや先輩スタッフは歓迎してくれたし、家族や友人、大学の先生も「がんばって」と応援してくれた。

 迎えた2012年の春、なかほら牧場での生活がスタートした。学ぶことが多く、日々は吹き抜ける風のように過ぎていった。

なかほら牧場で働いていた時の島崎さん。

熱心な仕事ぶりが評価されて、乳製品工場の責任者にも指名された。

 「牛乳、飲むヨーグルト、ソフトクリームのミックス、カップのアイスクリーム、バターも作りました。大学では乳製品製造学という授業があって実習もしたんですけど、実際にやってみないとわからないことがたくさんありましたね。お給料をいただきながらそれをやらせていただけるのは本当にありがたいことで。この経験がなかったら、自分で牧場を始めるのもハードルが高かったと思います」

 島崎さんが働き始めて4年目の2015年、神奈川県山北町の大野山の麓にある共和地区の住民有志が中洞さんとコンタクトを取り始めていた。大野山にあった県営育成牧場が翌年春に閉鎖されることが決まっていたこともあり、これからの使い道についてアドバイスを求めていたのだ。

 中洞さんから山北町の話を聞いた島崎さんは、その年の11月、自ら立候補して中洞さんととともに山北町に向かった。

 「中洞牧場は何年か働いたら独立する先輩も多いし、私もいずれは自分で牧場をやりたいと思っていて、ちょうど土地を探し始めたタイミングだったんです。神奈川県出身なので、神奈川でお借りできる土地があればいいなと思っていたところでした」

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未知の細道 No.125

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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