福島県いわき市
10月15日、福島県いわき市。
キノコの日、僕は80歳のご夫婦とともに山に入った。
森の宝石とキノコの王様を求めて。
最寄りのICから【E6】常磐道「いわき四倉IC」を下車
最寄りのICから【E6】常磐道「いわき四倉IC」を下車
昨年10月6日と11月4日、福島のいわきの山中で「森の宝石」が発見された。世界三大珍味のひとつで高級食材のトリュフだ。これが専門家に持ち込まれ、鑑定によって日本固有のトリュフ「ホンセイヨウショウロ」と判明したのが、今年の7月。福島初、全国で7例目の発見として大きく報じられた。
その報道をたまたま目にして、僕は驚いた。トリュフといえばフランスやイタリアなどヨーロッパが主な産地というイメージがあったからだ。日本でも自生しているということを知った瞬間、頭のなかに浮かんだ言葉、それはシンプル。
……僕も採りたい。採った人に話を聞きたい。
稀人ハンターを名乗り、珍しい人やモノゴトを追い求めて生きている僕にとって、この衝動を抑えるのは難しい。今年の夏も、幻の存在、世界一の味と呼ばれる羊肉の生産者に会いに片道10時間かけて北海道の焼尻島に行った。それに比べれば、いわきはご近所さん。しかも、報道を見たのは夏だったから、キノコのシーズンである秋も間近。もはや、行かない理由を見つけるほうが難しい。
ちなみに僕はまごうことなき庶民なので、トリュフを食べたのは過去に一、二度あるかないか、トリュフ風味のなにかだった可能性すらある、という程度。トリュフを食べたいというよりは、宝探しの感覚だ。
僕は発見者のひとり、いわきキノコ同好会の会長、冨田武子さんに連絡を取った。いわき市の元教員で、現在は洋画家でもある冨田さんは気さくな方で、「トリュフを採りたい」という僕のストレート過ぎるリクエストにも「案内しましょう」とおおらかに応じてくれた。そうして僕は10月15日、いわきに向かった。僕はまったく知らなかったのだけど、奇しくもその日は日本特用林産振興会によって制定された「キノコの日」だった。
川内イオ