未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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いわきの山でトレジャーハンティング

森の宝石とキノコの王様を求めて。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.124 |25 October 2018
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#7次こそ必ず。

武子さんが描いた絵。武子さんは会報誌にキノコの絵とコラムを寄稿している。

 あああああ~。森の宝石もキノコの王様も逃してまさかの成果ゼロ。肩を落とす僕に、まさかのミラクルが待っていた。山を下り、冨田家でお茶をいただきながら武子さんが描いたキノコの絵などを拝見して、そろそろ帰ろうかというその時!

  • 冨田家にはキノコがたくさん。こちらは研究用に乾燥させているところ。

 武子さんが「お土産にどうぞ」と紙袋を持ってきてくれた。そのなかに、ケーキを入れるような箱が入っていた。武子さんはその箱を指して、「マツタケです」と言った。

 「この前、孫たちとキノコ狩りに行ったときにね、孫が見つけたんだ。放射線量のチェックもして基準値以下だったから、よかったら持って帰ってください」

 思わず、ええ! と大きな声をあげてしまった。取材に同行してもらって、お土産にマツタケをもらうなんて、ありえない。僕がアワアワしていたら、ご夫妻は優しく微笑んでこう言ってくれた。

 「私たちはまた採れますから。またキノコ狩りに行きたくなったら連絡ください」

 泉駅で電車を待っている時、がまんできずに箱を開けてみると、とても大きくて立派なマツタケが2本も入っていた。デパートだったら桐の箱に入っていそうなぐらいの、まさに王様といった見事なたたずまいのマツタケだった。

 僕はまたいわきに戻ってこようと思った。恩返しにふさわしいのは、やっぱり森の宝石かキノコの王様だろう。次こそ必ず。

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未知の細道 No.124

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。