ウォーミングアップを終え、ついにトリュフの発見場所に。「人が殺到すると困る」ということで詳しい場所は書けないが、え? こんなところに? という林道の脇だ。落ち葉がたまっていて、そこをイノシシがエサとなるミミズを求めて鼻でこすりながら歩いたらしく、土がほぐされている。
「落ち葉をそおっとどければいい」という武子さんの指示通りに、熊手で土をかく。
「白い石ころみたいなもんだからね。固まったおもちのような感じ」
なるほど。「白い石ころ」「固まったおもち」「コロリと出てくる」と呟きながら、手を動かす。始めてすぐに気づいたけど、落ち葉と土の間には石ころやらどんぐりやらいろんなものがあって、もし数センチのトリュフがあったとしても見分けられる自信がない。
不安に駆られながら、「白い石ころ」「固まったおもち」「コロリと出てくる」と熊手を動かしていると、見慣れぬ白い小さな塊が!!! もしや!!! と一目散に武子さんのもとに駆け寄り、「これはなんですか?」と見せた。ん? という表情で、武子さんがつまみ上げる。数秒見つめた後に「うーん、植物の種だね」と言われて、ガックリ。
いやいや、まだまだ! 気合いを入れ直してしゃがみ込む。作業はまったく地味そのものだけど、これほどドキドキしながら熊手を振るったことがあるだろうか? いやない! 呪文のように「白い石ころ」「固まったおもち」「コロリと出てくる」と繰り返していたら、また怪しき物体が落ち葉の下から顔を出した! ムム!! これは僕が知っているトリュフの見た目にそっくり……もしや!!! と思って指でほじくりだしたら、ドングリの殻斗、いわゆるドングリ帽子だった。なんて紛らわしい!
その後も似たような空振りが続き、あー! とか、くそー! とかひとりで大騒ぎしていたら、武子さんが決断を下した。
「やっぱりないね。もう行きましょうか」
川内イオ