未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
124

いわきの山でトレジャーハンティング

森の宝石とキノコの王様を求めて。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.124 |25 October 2018
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#6キノコはタイミング

冨田夫妻が以前にマツタケ狩りをしていた秘密の山

あああああ~。森の宝石を狙うトレジャーハンティング、失敗に終わる……。これでゲームセットかと思っていたら、ご夫妻の計らいで、別のチャンスが与えられた。次のターゲットは「キノコの王様」マツタケだ!!知らなかったのだけど、マツタケも山のなかに自生するものらしい。ただし、非常に繊細で、どこにでも生えるものじゃないという。

「マツタケはきれい好きというか、荒れた山には出ませんね。繊細でほかの菌に負けやすいので、山の尾根付近、崖みたいなほかの菌があまりはびこらないようなところにしか生えない。しかも松の下生えとしてツツジがあるようなところで、生息地がぐっと狭まってるんですね」

さすが王様、そんじゃそこらのところには生えないぜ、俺が欲しけりゃ住みよい土地を提供しな、っていうことか。それで希少価値が高いんだな。

トリュフスポットから車でおよそ20分。ついたところは手つかずのナチュラル感満載の山。しかも「崖みたいなところ」という条件を満たすために、斜面が急。それでもご夫妻はなんということなく登っていく。油断していたら置いて行かれそうなペースだ。

結論から言うと、ここは空振りだった。僕にはさっぱり見分けがつかないけど、お二人はしきりに「ここはもう誰かが入っているな」と話していた。人が出入りした痕跡があるようだ。明雄さん曰く「マツタケがあるときは、香りがプンプンするんだ。でも、ここはしないもんね」。確かに、マツタケらしき匂いはしない。

武子さんによると、斜面に樹齢60年から100年ぐらいの松が生えていて、下生えにツツジがあり、マツタケが育つにはぴったりの場所なのだが、僕も含めて3人ともマツタケを発見することはできなかった。きっと、誰かが先に見つけてしまったのだろう。

「キノコはタイミングが大切なんです。早すぎても出てないし、遅すぎたら誰かが採ってる。今回はちょっと遅かったかな」

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未知の細道 No.124

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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