あああああ~。森の宝石を狙うトレジャーハンティング、失敗に終わる……。これでゲームセットかと思っていたら、ご夫妻の計らいで、別のチャンスが与えられた。次のターゲットは「キノコの王様」マツタケだ!!知らなかったのだけど、マツタケも山のなかに自生するものらしい。ただし、非常に繊細で、どこにでも生えるものじゃないという。
「マツタケはきれい好きというか、荒れた山には出ませんね。繊細でほかの菌に負けやすいので、山の尾根付近、崖みたいなほかの菌があまりはびこらないようなところにしか生えない。しかも松の下生えとしてツツジがあるようなところで、生息地がぐっと狭まってるんですね」
さすが王様、そんじゃそこらのところには生えないぜ、俺が欲しけりゃ住みよい土地を提供しな、っていうことか。それで希少価値が高いんだな。
トリュフスポットから車でおよそ20分。ついたところは手つかずのナチュラル感満載の山。しかも「崖みたいなところ」という条件を満たすために、斜面が急。それでもご夫妻はなんということなく登っていく。油断していたら置いて行かれそうなペースだ。
結論から言うと、ここは空振りだった。僕にはさっぱり見分けがつかないけど、お二人はしきりに「ここはもう誰かが入っているな」と話していた。人が出入りした痕跡があるようだ。明雄さん曰く「マツタケがあるときは、香りがプンプンするんだ。でも、ここはしないもんね」。確かに、マツタケらしき匂いはしない。
武子さんによると、斜面に樹齢60年から100年ぐらいの松が生えていて、下生えにツツジがあり、マツタケが育つにはぴったりの場所なのだが、僕も含めて3人ともマツタケを発見することはできなかった。きっと、誰かが先に見つけてしまったのだろう。
「キノコはタイミングが大切なんです。早すぎても出てないし、遅すぎたら誰かが採ってる。今回はちょっと遅かったかな」
川内イオ