未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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男鹿の湯再建に挑む!

温泉ガール奮湯記

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.89 |25 April 2017
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#6謎の子どもたち

明るく優しい水品さんと豊島さんに会いたくて、男鹿の湯に集まる近所の子どもたち

 インタビュー中、何度か小学生前後の子どもたちが施設に出入りしていた。水品さんと親し気に話をしているので、気になって「あの子たちは?」と聞いたのだが、その答えに驚いた。

「地元の子です。春休みで、近所にほかに遊び相手もいないから、毎日遊びに来るんですよ(笑)。すごい気が利くし賢いので、雑用を手伝ってもらってて。近くで畑を借りているのですが、野菜作りも詳しいから今日もいろいろ教えてもらいました」

 水品さんに温泉を案内してもらい、話を聞いていたロビーに戻ると、豊島さんと子ども3人がコンロでそば粉ガレットを作っていた。
 男の子が「水品さんの分はないよ~」というと、水品さんが「なんで~!」と返す。

 男鹿の湯で調理を担当している豊島さんによると、そばを打つときに余ったそば粉がもったいないので、時間があるときに子どもたちとよくガレットを作って食べるそうだ。
 ほかの温泉宿や旅館ではまず見ることのない光景だけど、水品さんと豊島さんのフレンドリーでほのぼのとした人柄が出ていて、ほっこりする。むしろ、混ぜてもらいたい。

入館料は大人600円、子ども300円。ケビンに宿泊して1日のんびり過ごしたい

 インタビューを終えて、温泉に入らせてもらった。平日の昼間で、ほかのお客さんがいなかったから、貸し切り状態だ。水質は、水品さん好みの「吸い付くようなトロンとしたお湯」で、確かに滑らか。木材をふんだんに使った浴室も気持ちいい。

 水品さんの話や豊島さん、子どもたちの楽しげな様子を思い浮かべながら手足を思いっきり伸ばし、あごまで湯に浸かっていたら、なんだか身体の芯から温かくなってきた。 「あ~いい湯だな~」

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未知の細道 No.89

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。