インタビュー中、何度か小学生前後の子どもたちが施設に出入りしていた。水品さんと親し気に話をしているので、気になって「あの子たちは?」と聞いたのだが、その答えに驚いた。
「地元の子です。春休みで、近所にほかに遊び相手もいないから、毎日遊びに来るんですよ(笑)。すごい気が利くし賢いので、雑用を手伝ってもらってて。近くで畑を借りているのですが、野菜作りも詳しいから今日もいろいろ教えてもらいました」
水品さんに温泉を案内してもらい、話を聞いていたロビーに戻ると、豊島さんと子ども3人がコンロでそば粉ガレットを作っていた。
男の子が「水品さんの分はないよ~」というと、水品さんが「なんで~!」と返す。
男鹿の湯で調理を担当している豊島さんによると、そばを打つときに余ったそば粉がもったいないので、時間があるときに子どもたちとよくガレットを作って食べるそうだ。
ほかの温泉宿や旅館ではまず見ることのない光景だけど、水品さんと豊島さんのフレンドリーでほのぼのとした人柄が出ていて、ほっこりする。むしろ、混ぜてもらいたい。
インタビューを終えて、温泉に入らせてもらった。平日の昼間で、ほかのお客さんがいなかったから、貸し切り状態だ。水質は、水品さん好みの「吸い付くようなトロンとしたお湯」で、確かに滑らか。木材をふんだんに使った浴室も気持ちいい。
水品さんの話や豊島さん、子どもたちの楽しげな様子を思い浮かべながら手足を思いっきり伸ばし、あごまで湯に浸かっていたら、なんだか身体の芯から温かくなってきた。 「あ~いい湯だな~」
川内イオ