寝ても覚めても温泉のことばかり考えている水品さんが就職したのは、温泉道場。経営不振の温浴施設のリノベーションやコンサルティングを手掛け、再生させてきた温泉ベンチャーに、正面突破でアプローチした。
「社長が経営コンサル会社でセミナー講師をしていたので、そこに忍び込ませてもらったんです。経営者しかいないところに、私ひとり学生で。そのときに、働かせてほしいとお願いしたら、最初は『新卒の子をとる勇気はない』と言われたんですが、何回か会って話をするうちに認めてもらって、新卒第一号で採用してもらいました」
当時は社員5人名程度の温泉道場で、水品さんは唯一のコンサル見習いに。普段は、同社が運営する温浴施設で働きながら、社長のもとで温泉ビジネスを学んだ。
仕事をしているうちに温泉への愛がどんどん昂ぶり、次第に「自分で温泉宿をやりたい」という想いが膨らんだ。そうして、「どこかに良い物件ないかな」と探しているうちに出会ったのが、「中三依温泉 男鹿の湯」。
「温泉経営者募集中、家賃無料という条件だったので、お風呂屋さんつながりのフェイスブックで話題になっていたんです。冷鉱泉だから燃料代はかかるし、企業が人を雇ってやろうとしたら、採算が合わない。でも、住み込みで工夫すればできると思いました」
川内イオ