なるほど! 「お客さんが急に増えると困る」という理由が、わかりました。昔ながらの製法による丁寧な仕事で、長い時間をかけてファンを増やして来たんだろうな。
話を聞いていたら、山田さんの奥さんが白い蔵まんじゅうを出してくれた。ガブッとかみつくと、白インゲンがこんにちは! 白インゲンが入っていることで、あんこの風味に別の食感と味が加わり、まんじゅうの味に深みが増している! 加庭さん、これ、確かに美味いです!!
ちなみに山田さんは学生時代、洋菓子を学んだそうで、その経験を活かしてクリスマスケーキやお誕生日ケーキの注文を受けたり、神津牧場のバターを使ったマドレーヌやガレットを作っている。洋菓子も同じように手間暇をかけていて、例えばガレットで使うバターはサイコロ状に切って、手でこねてひとつひとつ生地に練り込んでいるそうだ。
「ガレットとマドレーヌは神津牧場でも売っているんですけど、牧場でガレットを買ってくれた県外の人が、美味しかったからと、後日、下仁田駅からわざわざタクシーに乗って買いに来てくれたんです(町なかから嶋屋までは車で30分!)。そういう時に、頑張ってきてよかったなと思いますよね」
そう言うと、山田さんは頬をほころばせた。オシャレなメガネに今風の風貌だけど、その笑顔からは職人としての誇りがうかがえた。
川内イオ