未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
81

本当にネギとこんにゃく以外なにもないのか!?

下仁田町アポなし探訪!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.81 |25 December 2016
この記事をはじめから読む

#15タクシーで30分かけて買いに来たくなるお菓子

嶋屋の蔵まんじゅう。あんこのなかには白インゲンが丸ごとごろっと!

 なるほど! 「お客さんが急に増えると困る」という理由が、わかりました。昔ながらの製法による丁寧な仕事で、長い時間をかけてファンを増やして来たんだろうな。

 話を聞いていたら、山田さんの奥さんが白い蔵まんじゅうを出してくれた。ガブッとかみつくと、白インゲンがこんにちは! 白インゲンが入っていることで、あんこの風味に別の食感と味が加わり、まんじゅうの味に深みが増している! 加庭さん、これ、確かに美味いです!!

 ちなみに山田さんは学生時代、洋菓子を学んだそうで、その経験を活かしてクリスマスケーキやお誕生日ケーキの注文を受けたり、神津牧場のバターを使ったマドレーヌやガレットを作っている。洋菓子も同じように手間暇をかけていて、例えばガレットで使うバターはサイコロ状に切って、手でこねてひとつひとつ生地に練り込んでいるそうだ。

「ガレットとマドレーヌは神津牧場でも売っているんですけど、牧場でガレットを買ってくれた県外の人が、美味しかったからと、後日、下仁田駅からわざわざタクシーに乗って買いに来てくれたんです(町なかから嶋屋までは車で30分!)。そういう時に、頑張ってきてよかったなと思いますよね」

 そう言うと、山田さんは頬をほころばせた。オシャレなメガネに今風の風貌だけど、その笑顔からは職人としての誇りがうかがえた。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.81

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。