未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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“究極で幻の珍味”を求めて三千海里!?

「海のギャング」を味わう気仙沼の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.58 |10 January 2016 この記事をはじめから読む

#7手間暇をかけて鮮度を保つ

朝、市場で売られたモウカの星は、数時間後には店頭に並ぶ。僕は「お魚いちば」で購入

 驚いたのは、その値段。この時期は、心臓ひとつに1000円前後の値段がつくそうだ。サメ一匹につきひとつしかないから、稀少な高級食材なのである。もっとも、旬の時期にはもっと安くなるという。
「本当の旬は5月、6月。今日は200匹ぐらいだけど、盛漁期には1日に2000、3000匹の世界で、横幅1キロある市場がモウカで埋め尽くされるぐらいに並びますよ。だから、価格も半値、3分の1ぐらいになります」
 モウカザメの心臓が食べられるようになったきっかけが「美味しいから」だとしたら、気仙沼でモウカの星が一般家庭で食べられるようになったのは、「たくさん獲れるから」ということなのかもしれない。

 モウカは不思議な魚で、血が抜けるとあっという間に鮮度が落ちてしまう。これは市場で扱われる無数の魚の中でもモウカザメにしか見られない現象で、理由はわからないそうだ。漁師さんはモウカザメの鮮度を保つために船上で血抜きをせずに市場まで持ってきて、市場で解体処理をしている。
 そこまで手間暇をかけているフレッシュなモウカの星だから、おススメの食べ方はスライスしての刺身。気仙沼では酢味噌で食べるのが一般的だ。「刺身だけだと飽きるから」と、野菜炒めに入れることもあるという。

 モウカの星を目の前にしながら熊谷さんの話を聞いていたら、ちょっぴりグロテスクなナマの心臓が美味しそうに見えてきた。
 熊谷さんの許可を得て、ひとりで市場内を見学していたら、運良くモウカザメの心臓を取り出しているところを見ることもできた。
 時計を見たら朝6時。
 眠気も冷めたし、腹も減ってきた。
 あとは、実食あるのみ!
 といっても市場内で食べることはできないし、朝6時ではお店も開いていないから、一度、宿に戻って一休み。

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未知の細道 No.58

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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