未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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“究極で幻の珍味”を求めて三千海里!?

「海のギャング」を味わう気仙沼の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.58 |10 January 2016 この記事をはじめから読む

#6ずっと前からモウカの星を堪能していた漁師さん

獲れたばかりのモウカザメ。旬の春には市場がモウカザメで埋め尽くされることもあるそう

 そして熊谷さんが「これです」と指さしたのが、カジキのすぐ近くにずらりと置いてあったサメ。
 おお! いました! これがモウカの星のモウカザメ!! 
「サメ」と言われてイメージするビジュアルがあると思うけど、まさにイメージ通り、悪そうな見た目をしている(笑) それもそのはず、気仙沼ではモウカザメと言われているけど、正式な名称はネズミザメ。成長すると3メートルにもなる海の捕食者で、海を舞台にしたパニック映画でよく見る獰猛な海のギャング・ホオジロザメの親戚なんだって。モウカザメの鋭い歯を見ると、絶対に海の中では出会いたくないと思ってしまう。

 気になるのは、なぜ、海のギャングの心臓を食べるようになったのか。
「気仙沼で一般的に食べられるようになったのは、20年前ぐらいかな。でも、漁師はずっと昔から食べていたんですよ。魚の心臓はすべて『星』と呼ばれていて、マグロの星といえばマグロの心臓。でも、ここでは心臓の需要があるのはモウカザメだけで、他の魚の心臓は食べない。売れるのはモウカだけですね」

「ずっと昔から」ということだから、「なんで?」という質問の答えはわからないけど、気仙沼ではほかの魚の心臓は食べないという話を聞いて、すっごくシンプルに考えると漁師さんにとって「モウカの心臓が一番美味しかったから」なのかもしれない。
 ちなみに、サメの心臓ってどんな形状か想像できますか? 僕も今回初めてとれたてホヤホヤのモウカの星を見せてもらったんだけど、大きさは人間のこぶし大で、見た目も人間の心臓と同じような形をしていた(人間の心臓をナマで見たことはありませんが)。

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未知の細道 No.58

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

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