そして熊谷さんが「これです」と指さしたのが、カジキのすぐ近くにずらりと置いてあったサメ。
おお! いました! これがモウカの星のモウカザメ!!
「サメ」と言われてイメージするビジュアルがあると思うけど、まさにイメージ通り、悪そうな見た目をしている(笑) それもそのはず、気仙沼ではモウカザメと言われているけど、正式な名称はネズミザメ。成長すると3メートルにもなる海の捕食者で、海を舞台にしたパニック映画でよく見る獰猛な海のギャング・ホオジロザメの親戚なんだって。モウカザメの鋭い歯を見ると、絶対に海の中では出会いたくないと思ってしまう。
気になるのは、なぜ、海のギャングの心臓を食べるようになったのか。
「気仙沼で一般的に食べられるようになったのは、20年前ぐらいかな。でも、漁師はずっと昔から食べていたんですよ。魚の心臓はすべて『星』と呼ばれていて、マグロの星といえばマグロの心臓。でも、ここでは心臓の需要があるのはモウカザメだけで、他の魚の心臓は食べない。売れるのはモウカだけですね」
「ずっと昔から」ということだから、「なんで?」という質問の答えはわからないけど、気仙沼ではほかの魚の心臓は食べないという話を聞いて、すっごくシンプルに考えると漁師さんにとって「モウカの心臓が一番美味しかったから」なのかもしれない。
ちなみに、サメの心臓ってどんな形状か想像できますか? 僕も今回初めてとれたてホヤホヤのモウカの星を見せてもらったんだけど、大きさは人間のこぶし大で、見た目も人間の心臓と同じような形をしていた(人間の心臓をナマで見たことはありませんが)。
川内イオ