未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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“究極で幻の珍味”を求めて三千海里!?

「海のギャング」を味わう気仙沼の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.58 |10 January 2016 この記事をはじめから読む

#3最高のホスピタリティで気仙沼の夜を満喫

11月の連休最終日のせいか、人影が少なかった復興屋台村

 基本的にはナマで食べるモウカの星は新鮮さが大切なので、船が出ていない日はなかなか手に入らない。
 ということは、復興屋台村も……と思いつつブラブラと歩きながら向かってみると、なんか暗い。足を踏み入れたら、店自体が半分ぐらい閉まっていてガックリ。連休中だから混んでるかなと思ったけど、人もあまりいなかった。それでもいくつか営業しているお店を外からのぞいてみて、自分好みのローカル&ほっこりな雰囲気だった「たすく」に入店。

 これが大ヒット!
 お店の一番人気と書かれた「漁師の賄い飯」の大盛りを注文したら、丼の上に、ご飯の量と同じぐらいのマグロとイクラがこんもりと! 思わず「すごい!」と感嘆すると、隣席のカップルも「うわ!」と目を丸めている。お店のおかあさんが微笑みながら、「うちは量が多いから、残してもいいのよ」というので即、「ありえません!」と答えた。これで1400円。いくら漁港の町とはいえ、安い! 
 鼻息も荒くマグロとイクラの山の攻略にとりかかると、新鮮な魚介が持つ豊かな海の風味が口の中にフワッと広がって、気分はすっかり竜宮城。美味い、美味いと呟きながら、一心不乱に山を掘る。36年の人生で、間違いなく充実度ナンバーワンの海鮮丼だった。
 食べ終わった時は、富士山に登った時のような満足感。お茶を飲みながら、フーッとひと息ついていたら、思い出した。
 仕事をしなくては!

 早速、店のおかあさんに「モウカの星はありますか?」と尋ねると、「ごめんなさいね、今日は入ってないのよ」とのお返事。予想していたことだったので、「そうですか」とあっさり納得したのだけど、とっても朗らかな雰囲気のおかあさん、「他のお店にないか聞いてくるね!」とサッと店を出てしまった。その日、「たすく」で働いているのはおかあさん一人だったから、何人かの客を残して、お店のなかは従業員ゼロに。青森でも感じたけど、東北の人ってほんと大らかで温かい! こういう瞬間に、その土地や人が好きになる。
 数分して戻ってきたおかあさんに、「他のお店もなかったわ。ごめんなさいね!」と謝られてしまったけど、そこまでしてくれたことに感謝感激である。一気に、初めての気仙沼がお気に入りのスポットに昇格した。


ボリューム満点かつ味も絶品の「漁師の賄い飯」
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未知の細道 No.58

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。