基本的にはナマで食べるモウカの星は新鮮さが大切なので、船が出ていない日はなかなか手に入らない。
ということは、復興屋台村も……と思いつつブラブラと歩きながら向かってみると、なんか暗い。足を踏み入れたら、店自体が半分ぐらい閉まっていてガックリ。連休中だから混んでるかなと思ったけど、人もあまりいなかった。それでもいくつか営業しているお店を外からのぞいてみて、自分好みのローカル&ほっこりな雰囲気だった「たすく」に入店。
これが大ヒット!
お店の一番人気と書かれた「漁師の賄い飯」の大盛りを注文したら、丼の上に、ご飯の量と同じぐらいのマグロとイクラがこんもりと! 思わず「すごい!」と感嘆すると、隣席のカップルも「うわ!」と目を丸めている。お店のおかあさんが微笑みながら、「うちは量が多いから、残してもいいのよ」というので即、「ありえません!」と答えた。これで1400円。いくら漁港の町とはいえ、安い!
鼻息も荒くマグロとイクラの山の攻略にとりかかると、新鮮な魚介が持つ豊かな海の風味が口の中にフワッと広がって、気分はすっかり竜宮城。美味い、美味いと呟きながら、一心不乱に山を掘る。36年の人生で、間違いなく充実度ナンバーワンの海鮮丼だった。
食べ終わった時は、富士山に登った時のような満足感。お茶を飲みながら、フーッとひと息ついていたら、思い出した。
仕事をしなくては!
早速、店のおかあさんに「モウカの星はありますか?」と尋ねると、「ごめんなさいね、今日は入ってないのよ」とのお返事。予想していたことだったので、「そうですか」とあっさり納得したのだけど、とっても朗らかな雰囲気のおかあさん、「他のお店にないか聞いてくるね!」とサッと店を出てしまった。その日、「たすく」で働いているのはおかあさん一人だったから、何人かの客を残して、お店のなかは従業員ゼロに。青森でも感じたけど、東北の人ってほんと大らかで温かい! こういう瞬間に、その土地や人が好きになる。
数分して戻ってきたおかあさんに、「他のお店もなかったわ。ごめんなさいね!」と謝られてしまったけど、そこまでしてくれたことに感謝感激である。一気に、初めての気仙沼がお気に入りのスポットに昇格した。
川内イオ