未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
71

夢を見にいらっしゃい。

新潟・越後妻有の「夢の家」の不思議な体眠記

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.71 |25 May 2016
この記事をはじめから読む

#12泊まれるアートはいかがですか?

「夢の家」体験記は以上である。
 最後に余談となるが、越後妻有には、大地の芸術祭が生んだ「泊まれるアート」作品が他にもあるので、一部だけだが紹介したい。

「脱皮する家」。棚田で有名な星峠集落にあり、その名の通り、床、壁、柱などあるとあらゆるところが彫刻刀で彫られた不思議な家だ。古民家が持つどっしりと温かな雰囲気と、述べ三千人が関わったという狂気じみた手仕事に感動する。

  • 脱皮する家(鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志)
  • 光の館(ジェームズ・タレル)。タレルは、人里が最も美しく見える場所を雪の中で探し、ここにたどりついた。

 光のアーティスト、ジェームズ・タレルが設計した「光の館」。瞑想するための家で、伝統的な日本家屋でありながら、空が見える巨大な天窓と精密にLEDによるインスタレーションが宿泊客を別世界へと誘う。その極上とも言える宿泊体験は、「夢の家」の対局かもしれない。

 今年から宿泊もスタートした「オーストラリア・ハウス」。独特の三角形のフォルムの建築物が美しい。中には、家と一体化した大掛かりな作品があって、宿泊客はいつでも作品を操作し、楽しむことができる。

  • オーストラリア・ハウス(アンドリューバーンズ・アーキテクト/ブルック・アンドリュー)。
    オーストラリアと越後妻有の絆の象徴でもある。
  • 三省ハウス。かつて教室だった空間に80床のベッドの清潔なベッドがある。

「三省ハウス」。廃校を利用したドミトリー形式の宿で、展示室や売店、体育館、食堂などもあって、ワイワイとグループで過ごしたり、他の宿泊客との交流が楽しそうだ。すぐ横の教室や廊下で、多数の作品の展示が行われているのも魅力だろう。

上記は、「夢の家」とは違い、どこもぐっすりと安眠できそうだ(各宿泊施設の詳細はこちら )。どこに泊まるにせよ、この世に二つとない独特の特別な体験が待っている。さあ、いざ、越後妻有へ。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.71

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。