次に目が覚めたのは四時だった。再び、夢を見ていたようだ。
私はまた虫の声を聞いていた。さっきとは違い、ピー、ピーという電子音のような甲高い声が混じっている。鳥の声のようなのだが、聞いたことがない。
ぼんやりしているうちにハッとした。
あ、窓がほんのり赤い。
もう朝が来ようとしている。いよいよ赤い光の時間帯が始まろうとしていた。
赤い光は、どんどん強くなっていき、いよいよ部屋全体を包み始めた。昨夜は、さぞかし怖いことだろうと想像していたが、実際にはまるで怖くはない。
むしろ、この赤一色の風景をどこかで知っている気さえした。
どこでこの風景を見たのだろう? わからない。
いつの間にか、私は記憶の川をさかのぼり、子供の頃に逆行していくような感覚に襲われた。どこ? おばあちゃんの家のような、古い友人の家のような。いつか見た夕焼けのような。わからないけど、ああ、懐かしい。
そして、気がつけば自分は赤い光と一体化してしまったかのような奇妙な感覚に陥った。夢か現実か、もはや境目がない世界に私はいた。そして、私は確かにこの世界を知っている、と体の芯の方ではビンビンと感じていた。
ああ、なんだろう。漠然と考えるうちに不意打ちのように思い当たった。そうだ、きっと、胎内だ。自分が胎児の時、子宮の中から見ていた世界はきっとこんな感じだったのかもしれない。赤い、赤い世界。確かに知ってる。
それは、ふんわりと居心地がよく、どこまでも懐かしい風景だった。
川内 有緒