相撲が盛んな東北には、巨漢の力士がゴロゴロといる。その中で、小柄ながらも東北大会5位の成績を収めた拓海くんは注目を集め、高校受験の際には岩手県内外の高校から「うちの相撲部へ」と誘いがあった。
しかし、拓海君はちょうど3歳年上の先輩が卒業し、相撲部の生徒がいなくなった山田高校に進学する。山田高校に進めばまたひとりになるだけでなく、山田高校には屋内の相撲場がないので、冬の間は基本的に筋トレに励むしかない。1年を通して土俵の上で稽古ができるライバル達とは、環境面で大きなハンデが生まれる。それをわかっていて、なぜ、敢えていばらの道を選んだのだろうか?
「卒業した先輩は、俺が山田高校で相撲をすると信じて相撲部を廃部ではなく休部にしてくれました。中学の頃からお世話になっている顧問の小田島(哲男)先生も、俺のために残ってくれました。先生や先輩たちの想いに応えなきゃいけないなと思ったから、誘いは断りました」
山田高校に進んだ拓海くんは、元小結の栃乃花などを教え子に持つベテランの小田島哲男先生のもとで稽古に励んだ。冬の長い岩手では必然的に筋トレが多くなったが、その結果、高校1年生にしてベンチプレスで95キロを持ちあげる筋肉をつけた。その筋力と持ち前のセンスに磨きをかけ、今年10月に開催される岩手国体に向けて強化指定選手にも選出された。練習環境のハンデを考えれば、快挙と言えるだろう。
今夏の大会で好成績を収めれば、岩手県代表として全国大会に挑むことになる。小田島先生は「被災地から国体選手を出すのか、出さないのかでは大きく違う。拓海にはプレッシャーになっていると思うけど、そういう気持ちを持って指導してきた」と期待を寄せる。
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川内イオ