未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
126

日曜の朝、コーヒーと対話と哲学と。

カフェから始まる思索の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.126 |26 November 2018
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#5気持ちいいモヤモヤ

店内で古書も販売されている。

 せっかくなので、僕も思い切って発言をした。最初と最後の言葉をここに記そう。

・(対話が始まってすぐの「嘘とは何か?」という文脈のなかで)嘘とは人を騙そうという意思、狙いがあるものではないか?

・(最後の感想として)嘘のなかには、誰かのためを思ってつく優しい嘘もある。ひどい嘘も優しい嘘も、嘘は嘘で悪いことと割り切ることができない。身近な人とのやりとりのなかで、嘘をついているとわかったとしても、君は嘘をついている! と居丈高に断罪することがいいのか、悪いのか。あるいは、疑惑を厳しく追及して白黒はっきりさせたほうがいいのか、わるいのか、わからない……。

 僕のモヤモヤが伝わるだろうか? 僕はこの会に参加する前も、参加してからも企業や政治家の嘘は厳しく断罪すべし、と思っているのだけど、身近な人間関係においては、この会を経て、態度があいまいになった。自分の意見が変わったというよりは、自分のなかの考えや意志が顕在化されたように感じる。

 自己紹介の時に、参加の動機として「いろいろな意見を聞いて、これは違う、これは同意すると自分のなかで咀嚼しているうちに、自分の輪郭がはっきりする」と話している人がいたけど、同じようなことかもしれない。これは普段の生活では味わうことのない体験で、2時間の朝モヤが終わった後、モヤモヤしているのに、すっきりした気分になった。

 運動をした後の爽快感に似ていると思ったら、そうだ、参加の動機として「頭のラジオ体操」と言っている人がいた。その意味がわかった。朝モヤは、恐らく普段あまり使っていない脳の一部を使うエクササイズになっていて、だから気持ちいいし、続けたくなる。朝モヤは500円でコーヒーを飲みながら参加できるのだけど、これは安い! と感じた。だって、2時間もエクササイズできるのだ。


未知の細道 No.126

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。