未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日曜の朝、コーヒーと対話と哲学と。

カフェから始まる思索の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.126 |26 November 2018
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#4「嘘と本当ってなんだろう?」

 何人かの参加者の支持を得て、この日は「嘘と本当ってなんだろう?」というテーマに決まった。日々、嘘と本当をどうジャッジするのか、しているのか、という内容だ。

 考えてみると、まず「嘘ってなに?」という疑問がわく。例えば、子どもが親につく嘘、親が子どもにつく嘘など身近な人間関係の間の罪のない嘘と、企業や政治が市民を騙すための嘘(産地偽装、隠蔽、虚偽答弁など)、犯罪を犯したか、犯していないかという人生にかかわる嘘など嘘にもいろいろなグラデーションがある。今回はどういう嘘と限定しなかったので、幅広い分野で「嘘と本当」の話になった。その会話の一部を紹介する。

 「父親を亡くした子どもに、母親が『お父さんは遠くに行ってしまった』と説明したとして、それも、嘘なのか? 人を幸せにできる嘘もあるのでは?」という話に対して、「嘘は真実に反するから最終的に幸せには寄与しない」という意見があった。

 「人間はそもそも正しくものごとを把握しているのか?」という疑問に対して、「感覚だけでは難しい。感覚と知性を掛け合わせることで、真実に迫ることはできる。嘘はそもそも本当のことがないと存在できない」というやり取りがあった。

 「なにをもって真実とするか、科学的にも判断するのは難しい」という意見に対して「科学は所定の手続きを経て、導き出されたものだから尊重すべき」という話もあった。

 具体的に「学校という現場でお金を盗った、盗られた」という場面を想定して「学校は教育の場で、刑事のように嘘と本当を明らかにする必要があるのか? お金がなくなったなら犯人捜しではなく、そうならないように教育をする方が大切だろう」という意見もあった。


未知の細道 No.126

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。