「同じ映画でも野外で見るとどう違いますか?」と私が尋ねると武川さんは、「野外の映画は、体感するもの」と答えた。「寒い暑い、星が見えたり、雨が降ったりと本当に色々あるんだけど、とりまく自然の全てが映画の演出になる」
ウッディ・アレンが脚本と監督を担当し、アカデミー賞を受賞した『ミッド・ナイトイン・パリ』をかけた年のことだ。
映画の中で雨が降り出すと、シンクロするように現実でも雨が降り出した。しかも、途中からはかなりの土砂降りに。それでも、多くの観客は会場に留まって映画を見続けた。
「せっかく遠くからきたのに雨が降って最悪だと言われても仕方がないのに、
映画と同時に本当に雨がふってきて、すごい体験した、すごくよかったと言ってくれる人がたくさんいたんです。その時、“マジック”が起きたんですね」
と武川さんは言う。
そして、映画が終わると同時に、もう一度“マジック”が起きると中村さんが教えてくれた。
それは頭上の暗闇に現れる満点の星空。
映画が終わった瞬間に、あちこちから「うわあ! きれい!」という驚きの声が聞こえてくる。
川内 有緒