映画が好きだった武川さんが就職したのは、やはり映画館。吉祥寺のバウスシアターである。
商店街の中にある独立系の映画館で、スクリーンが3つあり、ライブや落語もやるというユニークな劇場だ。上映される映画も、ハリウッドのメジャーどころから、クラシック映画、インディペンデント系までと様々。
社員となった武川さんは上映作品の編成も任されるようになった。
「その頃にたくさんの映画を見て、映画っていうのはアメリカ映画だけじゃないんだ。フランス映画もあるし、メキシコの映画もあるんだって知りました」
長く映画館で働くうちに、映画市場というものが急激に変化していることを肌で感じたという。その大きな要因は、郊外型の巨大シアター、いわゆる「シネコン」の登場である。
「シネコンが沿線にでき始めると、メジャーな映画のお客さんは見事に減っていったんです。しかし、逆にそれまでポツポツとしたお客さんが来なかったクラシック映画の方はお客さんが増えるという逆転現象が起きました」
また、全国的には知名度が低い映画でも、大ヒットする映画も出てきた。その時、気づいたことがある。それは、すなわち。
「こだわりを持って作られた映画は人を呼べるし、映画がその土地に合っているかというのが重要なんです」
川内 有緒