未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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八ヶ岳の麓の「星空の映画祭」

星が煌めく夜は、映画の魔法にかかりたい

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供= 星空の映画祭
未知の細道 No.95 |25 July 2017
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#3激変する映画市場

東京の映画館で働きながら、世界中の映画を見てきた武川さん。その経験が今に活かされる。

 映画が好きだった武川さんが就職したのは、やはり映画館。吉祥寺のバウスシアターである。
 商店街の中にある独立系の映画館で、スクリーンが3つあり、ライブや落語もやるというユニークな劇場だ。上映される映画も、ハリウッドのメジャーどころから、クラシック映画、インディペンデント系までと様々。
 社員となった武川さんは上映作品の編成も任されるようになった。
「その頃にたくさんの映画を見て、映画っていうのはアメリカ映画だけじゃないんだ。フランス映画もあるし、メキシコの映画もあるんだって知りました」

 長く映画館で働くうちに、映画市場というものが急激に変化していることを肌で感じたという。その大きな要因は、郊外型の巨大シアター、いわゆる「シネコン」の登場である。
「シネコンが沿線にでき始めると、メジャーな映画のお客さんは見事に減っていったんです。しかし、逆にそれまでポツポツとしたお客さんが来なかったクラシック映画の方はお客さんが増えるという逆転現象が起きました」
 また、全国的には知名度が低い映画でも、大ヒットする映画も出てきた。その時、気づいたことがある。それは、すなわち。
「こだわりを持って作られた映画は人を呼べるし、映画がその土地に合っているかというのが重要なんです」

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未知の細道 No.95

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。