さっそくSNSで、「星空の映画祭を復活したい人、集まれ!」と呼びかけた。すると地元のデザイナー、農家、建設業の人など職種の異なる五人が集まった。彼らはたびたび集まり、多くのことを一から決めていった。
「なにを上映するかという企画会議から始まって、入場料の設定の仕方、ちらし作り、ちらし配り、会期中の会場設営や運営まで話し合いました」
東京にいる武川さんは、映画の配給会社との交渉などの映画関係の実務を担当。地元にいる秋山さんを中心としたメンバーは、その他の準備を担当した。そして、映写や配給の窓口にあってくれたのは、あの新星劇場の柏原さんだった。
記念すべき復活の年となる2011年、選ばれた映画は『アバター』。『ジュラシック・パーク』の体験を再現したいと選んだ。
当時の星空の映画祭では予約はとらず、当日チケット制である。だから蓋を開けて見るまで何人くるかは全くわからない。会期中は毎日ドキドキしながらお客さんを待った。
当日、『アバター』にはたくさんの子どもたちがやってきた。目を輝かせて映画をみる姿は、「まるで昔の自分をみるようだった」と武川さんはいう。結果、『アバター』はその年一番の人気作品となった。
また以前のラインナップでは、ファミリー向けのメジャーな作品が多かったが、今回は新たな試みとして、有名ではなくとも、このロケーションに合いそうな映画もかけてみることにした。
選ばれたのは、フランス映画の『夏時間の庭』。
派手なアクションはなく、南フランスの田舎でバカンスを過ごす家族を描いたドラマである。南フランスの草原と原村の景色はどこか似ていると、セレクトされた。
「ものは試しでやってみたんですが、年配の女性のお客さんがきてくれました。しかも、たくさん! どこにこんなにマダムがいたんだろう! というほどに女性たちが連れ立ってやってきました」(武川さん)
ここには、映画を求める人たちがたくさんいる、星空の下で映画を見たい人がたくさんいる。スタッフは、確かな手応えを感じた。
柳平さんも喜んでくれ、毎日のように映画祭に現れた。そして柏原さんも毎日、映写小屋にこもって映写機を回してくれた。
二週間の映画祭で、約千四百名の観客を動員。
こうして、一度消えかけた「星空の映画祭」は、世代を超えたメンバーで再び火が灯ったのである。
川内 有緒