そもそも、なぜスターダスト・シアターは休止してしまったのだろう?
現在、映画祭の運営メンバーで、原村の出身の中村さんは、その疑問にこう答えてくれた。
「原村はペンションがたくさん建ち並ぶペンション村で、80年代に、二十代、三十代の若者がペンション経営をしようとここに“入植”してきました。入植した頃は、みんな超パワフルで、毎晩のようにみんなで一緒にお酒を飲んだりして、あれやろう、これやろう、みたいな勢いがすごかった」
中村さんのご両親も、まさにペンションを経営する一人だった。
「僕が小さい頃は、ペンションには一年中お客さんがたくさん来ていて、すごく忙しかった。近隣ではマラソン大会や自転車レースなんかもあって、この映画祭も大人気でした。映画祭にも、一時は企業スポンサーについていたと思いますよ。ただ、ペンションオーナーも徐々に年をとってきたし、ペンションも人気が落ちてきて、一つ一つイベントがなくなっていったんです……」
それは、ある意味で日本の長引く経済不況とも重なるのかもしれない。とにかく大手企業が映画祭を支えることができなくなると同時に、ペンションへの旅行者も減り、地元側も以前ほどの勢いがなくなった。
それが、武川さんが東京で働いている間に、原村で起こった大きな変化だった。
川内 有緒