未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
95

長野県諏訪郡

この夏32回目を迎える「星空の映画祭」。それは、暗闇と森のざわめきの中でしか味わえないフシギ体験。今や1万人近くを動員する人気映画祭は、過去には休止になったことも。その時、「子どもの頃に感動をくれた映画祭を復活させたい」と立ち上がった人々のもうひとつのドラマ──。

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供= 星空の映画祭
未知の細道 No.95 |25 July 2017
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長野県諏訪郡

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#1森の中から恐竜が出現!

 1994年の夏──。
 長野県の八ヶ岳の麓の森の中で、ワクワクしながら映画の上映を持っている子どもたちがいた。ひんやりとした夜風が吹くと、夕闇の中で森の木々がざわめく。
 やがて、漆黒の闇の中に鬱蒼とした熱帯ジャングルが浮かび上がった。そこにぬっと現れたのは、太古から蘇った巨大な恐竜!
 そう、映画は、『ジュラシックパーク』だ。
「ジャングルにいると錯覚するような、ものすごい臨場感だった」といまや大人になった当時の少年たちは思い出す。

 これは1984年から始まり、この夏で32回目を迎える「星空の映画祭」のある年の一幕である。当時は「スターダストシアター」という名の手作りの映画祭だったが、今では1万人近くを動員する人気イベントに成長した。
 実はこの映画祭、2009年に一度だけ休止になってしまったことがある。
 その時、「子どもの頃に感動をくれた映画祭を復活させたい」と奮闘した人たちがいる。今回はその一人である武川寛幸さんと、運営に関わって三年目のコアメンバー、中村洋平さんに話を聞こうと新宿から特急列車あずさに乗った。
 二人とも子どもの頃にジュラシック・パークを見た世代で、今は会社で働きながら、この映画祭に関わる。
 目指す旅先は、長野県諏訪郡の原村である。

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未知の細道 No.95

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。