長野県諏訪郡
この夏32回目を迎える「星空の映画祭」。それは、暗闇と森のざわめきの中でしか味わえないフシギ体験。今や1万人近くを動員する人気映画祭は、過去には休止になったことも。その時、「子どもの頃に感動をくれた映画祭を復活させたい」と立ち上がった人々のもうひとつのドラマ──。
最寄りのICから中央自動車道「諏訪南」を下車
最寄りのICから中央自動車道「諏訪南」を下車
1994年の夏──。
長野県の八ヶ岳の麓の森の中で、ワクワクしながら映画の上映を持っている子どもたちがいた。ひんやりとした夜風が吹くと、夕闇の中で森の木々がざわめく。
やがて、漆黒の闇の中に鬱蒼とした熱帯ジャングルが浮かび上がった。そこにぬっと現れたのは、太古から蘇った巨大な恐竜!
そう、映画は、『ジュラシックパーク』だ。
「ジャングルにいると錯覚するような、ものすごい臨場感だった」といまや大人になった当時の少年たちは思い出す。
これは1984年から始まり、この夏で32回目を迎える「星空の映画祭」のある年の一幕である。当時は「スターダストシアター」という名の手作りの映画祭だったが、今では1万人近くを動員する人気イベントに成長した。
実はこの映画祭、2009年に一度だけ休止になってしまったことがある。
その時、「子どもの頃に感動をくれた映画祭を復活させたい」と奮闘した人たちがいる。今回はその一人である武川寛幸さんと、運営に関わって三年目のコアメンバー、中村洋平さんに話を聞こうと新宿から特急列車あずさに乗った。
二人とも子どもの頃にジュラシック・パークを見た世代で、今は会社で働きながら、この映画祭に関わる。
目指す旅先は、長野県諏訪郡の原村である。
川内 有緒