「それまでの過去3回の挑戦に比べると、4回目は本当に楽しかった。122日間、あっという間だった」と大場さんは思い出だす。
なかでも大場さんが成功の理由として強調するのは、その瞬間、瞬間を楽しむということだ。
「楽しく歩いていれば、自然も、ソリも俺の分身みたいになっちゃう。そうなるとどこでも歩けるんだ。例えば、寒ければ、海が凍るから、よく歩ける。そうすると、“寒ささん”、ありがとう、という気持ちになる。太陽がずっと出ないなかで太陽がちょっと出ると、太陽さん、ありがとう。そうやって楽しんでいれば余計なことを考えずに、その時のことに集中できるんです」
約4ヶ月半の挑戦を終え、戻って来た大場さんを、日本中が大歓迎。特に山形県での熱狂にはすっかり驚かされた。大場さんは県民栄誉賞を受賞した。
さらに2年後となる1999年、大場さんは南極大陸横断にもチャレンジ。これも見事に成功し、今度は第4回植村直己冒険賞を受賞した。
両極の冒険に一区切りがついたこともあり、大場さんは約20年振りに故郷の最上町で暮らし始めた。
川内 有緒