未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
129

職業欄は冒険家!?

山形の大自然が生んだ冒険家・大場満郎さんの「死ぬまで輝いた目で生きる」という人生の挑戦

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.129 |10 January 2019
この記事をはじめから読む

#5アマゾン河6000 キロを筏で下る

大場満郎冒険学校の看板

次は、南米の大河アマゾン、ペルーからブラジルの河口までの6000キロをイカダで下るという大計画を思いつく。
次はアマゾン!? と家族は仰天。
家族会議が開かれ、大場さんはついに実家から勘当された。

大場さんは帰るべき家と故郷を失った。
とても寂しかったが、もう後ろは振り向かなかった。
アマゾンに出発する直前、大場さんは鷹匠の師匠「じっちゃん」を訪ねた。すると、じっちゃんは、「道 迷わず進め、正直に道」と色紙に書いて、送り出してくれた。
こうして、大場さんの冒険人生が始まったのだ。

自作のイカダの上に小さな小屋を立て、バナナなどの食料をたくさん積み込んで日夜アマゾン河を下った。真夜中にイカダが川岸にぶつかりそうになっていることに気がついて、闇の中であわてて進路を変更したことも度々あった。

「すごい大冒険ですね」
わたしが驚嘆すると、「いやあ、俺の場合、みんなが助けてくれるんだよ! ブラジルに農業移民で入っていた人に助けられたり」と、別にたいしたことなかったという雰囲気で答えた。
「ねえ、大場さんって、絶対楽天的な性格ですね」
「そうだね、それもあるかもしれない。嫌いなことはやりたくないんだけど。サラリーマンはできないね! だって昼寝できないじゃん」
「昼寝って、けっこうするんですか?」
「うん、昼寝は大事だよー」
 私たちはそんな話をしながら、最上町に入った。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.129

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。