未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
129

山形県最上町

「人生、競争じゃつまんない」
単独徒歩による北極海横断など数々の冒険を行って来た大場満郎さん。この二十年近くは、故郷の最上町をベースに、子どもたちが参加できるフィールド活動「冒険学校」を行ってきた。その冒険家がいま伝えたいこととは――。

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.129 |10 January 2019
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
山形県最上町

最寄りのICから【E4】東北自動車道「古川IC」を下車

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#1冒険家の故郷を目指して雪国へ

長いトンネルを抜けたら、そこは雪国だった――。
と、川端康成が『雪国』で描いたのは新潟の湯沢温泉らしいが、わたしが向かうのは山形県最上町。方角こそ微妙に違えど、状況は感動的なほどよく似ていた。

東京から新幹線に乗り、福島を通過し、延々と続くトンネルを抜けた。
すると、あたりは一面の雪! 雪! 雪!
マイナス30度対応の長靴を履いてきてよかった! 自分、よくやったぞ、と思った。

新庄駅の改札を通ると、えんじ色のフリースを着込んだ男性が、笑顔で近寄ってきた。
「やあ、こんにちは、川内さん!」
スコーンと抜けた青空みたいな笑顔のその人は、冒険家の大場満郎さんである。

冒険家の大場満郎さん

現在65歳になる大場さんは、山形県では知らない人はいないほどの有名人だ。その功績をダイジェストでまとめると……こんな感じだ。

 1997年に人類史上初めて単独徒歩による北極海横断に成功し、県民栄誉賞を受賞。
 1999年には単独徒歩による南極大陸横断にも成功。
 2000年 第4回 植村直己冒険賞(優れた冒険家に与えられる賞)を受賞。

「大場さん、さすが薄着ですね!」
と感嘆すると、「いやあ、そんなことないよ!すごく寒いよねー」と答えたが、まるで寒そうに見えなかった。私が、マイナス30度までOKというのが売り文句の長靴を履いてきた、と自慢げに言うと、「いやあ、たぶんそれではマイナス30度は無理だと思いますよ!」と一瞬で見抜く。

これから訪ねるのは、県内でも豪雪地帯である最上町。大場さんの故郷で、「アースアカデミー大場満郎冒険学校」、通称「冒険学校」があるところだ。

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未知の細道 No.129

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。