未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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77万年前の地磁気逆転地層を目指して!

養老川と地層を巡る

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.117 |10 JULY 2018
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#11ほっとひと息、飯給駅

 飯給駅に戻ってきた。ここが今日のファイナルディスティネーションだ。時計を見ると、針はもう4時を指している。雨の中、4時間も里山を歩き回ったことになる。次の列車が来るまで、あと40分くらいだ。それまで無人の駅舎で待つことにした。
 すると私たちに声をかけてきた男性がいた。グループの中の一人と知り合いだという、松本さんだ。松本さんは地元の人たちとともに、飯給駅の前で「ギャラリーいたぶ」というスペースを週末に運営しており、そこは飯給駅を乗降する観光客が一息つける場所になっているという。

「この雨の中、歩いてきたの? すごいねえ」と驚いた松本さんは、列車を待っている私たちのために、駅舎まで暖かいコーヒーがたくさん入ったポットを持ってきてくれた。ふだんはギャラリーに立ち寄る人たちにもコーヒーをふるまっているという松本さん。雨の中を歩いてきた体に、思いがけないコーヒーのおいしさが沁みわたった。
 やがて赤い列車がホームに入ってきた。みんなで松本さんにお礼を言って、列車に滑り込む。列車の窓から手を振ると、松本さんは手を振り返して見送ってくれた。

 帰りの列車に揺られながら、みんなが川底で拾ってきた石英などの石を見せてもらった。白や緑などのきれいな石の粒を見ていると、養老渓谷の河床や地層、柔らかい地質から生まれた独特な地形の数々が思い出された。大昔、海の底だった地層「千葉セクション」。あの場所が、ここが「千葉時代のGSSPだよ」と言われる日も、近いかもしれない!

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未知の細道 No.117

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。