未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
117

77万年前の地磁気逆転地層を目指して!

養老川と地層を巡る

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.117 |10 JULY 2018
この記事をはじめから読む

#8素掘りトンネルをくぐれ!

 さてここで、鈴木さんと地磁気逆転地層とはお別れである。これから周辺の地層などを見学しながら、帰りの電車に乗る飯給駅まで歩くのだ。飯給駅までの道のりにも、房総の軟らかい地質特有の地形がたくさんあるのだという!

 月崎駅の近く、道の傍らにぽっかりと薄暗い穴が空いている。先まで見通せるので、短いトンネルのようだ。
 これは房総半島に数多く点在する、古い素掘りトンネルのひとつで、明治時代に作られた「永昌寺トンネル」だ。昔の人は道や線路を通すために、山を切り開いて人力でトンネルを掘った。この辺りの地盤が軟らかいからこそ、できたことである。この永昌寺トンネルも、今なおこの地に住む人たちの生活に欠かせない道路になっている。この月崎駅周辺など、市原市にはたくさんの素掘りトンネルがあるという。
 そして素掘りのトンネルのもう一つの魅力は、トンネルの内部の壁面が、全て地層として見られることだ。古いトンネルであるため壁面にモルタルなどを吹き付けておらず、岩盤が自然のままになっているからだ。

 薄暗い永昌寺トンネルを進んでいく。トンネルの内部はまるで将棋の駒のような形をしており、これは観音堀と呼ばれる伝統的な掘り方だ。
 ところどころに化石があり、みんなで探しながら歩く。「漣痕(れんこん)化石がありますよ」と大里さんが教えてくれた。漣痕化石とは、漣(さざなみ)つまり、海の波の化石のことなのだ!

トンネルの中の漣痕化石。

 楽しい化石探しもあっという間に、反対側の出口へと出た。観光客の中には、この素掘りトンネル巡りをする人も多いのだとか。私たちもこの後、さらに二つの素掘りトンネルをくぐりながら、飯給駅を目指して歩いていった。

このあとくぐった、丸型堀の素掘りトンネル。
このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.117

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。