地磁気逆転地層、素掘りトンネル、川廻しなど、房総の軟質な地盤ならではの地形を観察しながら、歩くこと数時間。やっと飯給駅が見えてみたが、このまま通り過ぎ、さらに10分ほど歩いて運泉寺に向かう。このお寺には「上総掘り」で造られた井戸があって、そのおいしい水を求めて、多くの人が汲みに来るという。
上総掘りは、その名の通り、この地域が発祥の伝統的な掘抜き井戸の工法だ。地中深くからこんこんと湧き出る水を飲んでみると、とてもおいしい。
もう一つ、この近くに、地元の人が「ちゃ水」と呼んでいる水が湧き出る井戸があるという。ちゃ水とはこの地域に多い、ヨウ素が混じった湧き水のことで、主に田んぼや畑の水として使われている。皆で運泉寺の近くに広がる田んぼの傍にあるちゃ水の井戸を探した。近づいて観察すると、確かにヨウ素特有の茶色い水が出ている。さらに近づくと、その独特のにおいを感じることができた。
市原周辺など房総半島にこのような自噴水が多いのも、実は地層に関係している。房総半島の地層は全て南側に隆起して傾斜しているので、北へと流れる地下水に圧力がかかる。だから井戸を掘るとポンプで組み上げなくても、自噴するというわけだ!
松本美枝子