未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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77万年前の地磁気逆転地層を目指して!

養老川と地層を巡る

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.117 |10 JULY 2018
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#10豊かな自噴水

水が絶えず湧き出てくる上総掘りの井戸

 地磁気逆転地層、素掘りトンネル、川廻しなど、房総の軟質な地盤ならではの地形を観察しながら、歩くこと数時間。やっと飯給駅が見えてみたが、このまま通り過ぎ、さらに10分ほど歩いて運泉寺に向かう。このお寺には「上総掘り」で造られた井戸があって、そのおいしい水を求めて、多くの人が汲みに来るという。
 上総掘りは、その名の通り、この地域が発祥の伝統的な掘抜き井戸の工法だ。地中深くからこんこんと湧き出る水を飲んでみると、とてもおいしい。

 もう一つ、この近くに、地元の人が「ちゃ水」と呼んでいる水が湧き出る井戸があるという。ちゃ水とはこの地域に多い、ヨウ素が混じった湧き水のことで、主に田んぼや畑の水として使われている。皆で運泉寺の近くに広がる田んぼの傍にあるちゃ水の井戸を探した。近づいて観察すると、確かにヨウ素特有の茶色い水が出ている。さらに近づくと、その独特のにおいを感じることができた。

 市原周辺など房総半島にこのような自噴水が多いのも、実は地層に関係している。房総半島の地層は全て南側に隆起して傾斜しているので、北へと流れる地下水に圧力がかかる。だから井戸を掘るとポンプで組み上げなくても、自噴するというわけだ!


未知の細道 No.117

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

市原の里山と地層を巡る旅旅プラン

予算の目安15000円〜

最寄りのICから【C4】圏央道「市原鶴舞」を下車
1日目
まずは五井駅へ。五井駅では小湊鉄道に乗って、里山の風景を見ながら月崎駅へ向かおう。
途中の里見駅でお弁当を買ったり、タブレット交換をチェックするのもよし。
月崎駅で下車し、養老川の「千葉セクション」を目指して、ハイキング。地磁気逆転地層のほか、周辺の素掘りトンネル、川廻し、上総堀の井戸、飯給駅前の「ギャラリーいたぶ」などを見て回ろう。
宿泊、食事は養老渓谷温泉郷
2日目
養老渓谷温泉郷で、温泉巡りや渓谷を楽しもう。周辺には「粟又の滝」など名所がたくさん。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。