未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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77万年前の地磁気逆転地層を目指して!

養老川と地層を巡る

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.117 |10 JULY 2018
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#9秘境! 浦白川のドンドン

 さて永勝寺トンネルを過ぎてしばらくすると、森の入り口に不思議な看板がかかっていた。「浦白川のドンドン」と書かれている。これはいったいなんだろう?
 私たちは看板の奥にある森へと進んでみることにした。森の小道をしばらく進んで、さらに急な坂になっている藪を下ると、急に目の前が開けた。そこにはなんと巨大な、観音堀りの素掘りトンネルの下を流れる川が現れたのだった!

 これが「浦白川のドンドン」なのだろうか……? 「これはおそらく昔の『川廻し』の跡ですね」と、グループの一人、河川の専門家が教えてくれた。
 「川廻し」とは、江戸時代以降にさかんに行われた房総半島特有の河川工事のことだ。養老川のように、軟質な地盤を削りながら蛇行して進む房総半島の河川。その曲がった川筋をトンネルなどに通してまっすぐにし、元の川筋は水田などに活用したのが、川廻しだ。

「ここは私も初めて見ました」という、市原市の忍澤さん。昔の川廻しの素掘りトンネルが、時間を経て流れに削り取られ、大きくなっていったのだろう。そしていつしか、地元の人にも忘れ去られてしまったのかもしれない。

 それにしても「ドンドン」とは、どういう意味なのだろう?
「きっと、川が増水した時の水の音とか、危険を知らせるような意味だったのかもしれないですね」と、河川や地質の専門家たちは考えながら話しあっていた。

 さて、ここで仕事に戻る忍澤さんとお別れだ。私たちは元の道に戻って「浦白川のドンドン」の真上辺りを歩いた。この下に森とトンネルと川があるなんて、ちょっと気づかないなあ……と思いながら。

雨の中、ずっと案内してくれた忍澤さん。
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未知の細道 No.117

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。