この日は特別に五井駅からも見える車庫に入らせてもらった。創立101年になる小湊鐵道のレールは、なんと明治時代のものもあるという!
人気の「里山トロッコ列車」も見せてもらった。その昔、小湊線で走っていたドイツ製のSLをモチーフに、クリーンディーゼルを搭載して新造した現代版の機関車が牽引する。風や光を感じられるようにオープンに設計されたトロッコは、里山の空気を味わうにはもってこいだ。車両の中に入ると、絵本作家・故かこさとしさんの絵本の世界がディスプレイされている。
かこさとしさんの作で『小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車』(偕成社)という絵本がある。小湊鐵道と市原の里山と文化を紹介する絵本だ。
この絵本には制作秘話がある。「里山トロッコ列車」が完成する前のこと、石川社長は、そのパンフレットの装画依頼の手紙をかこさんに送った。当時90歳で、新しい仕事は断っていたというかこさんだが、その手紙を読み、7年もかけた「里山トロッコ」の計画に感心し、引き受けてくれたのだという。それが出版社の目に留まり、絵本として刊行されたのだ。
そんな絵本のように美しい市原の里山の風景を楽しむために「ドライブと組み合わせて小湊鐵道を使って欲しいですね。今回のルートとは逆に、まずは養老渓谷駅まで車で行って、そこから列車に乗って地層や渓谷を巡るのも楽しいですよ」と石川社長は教えてくれた。
松本美枝子