未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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77万年前の地磁気逆転地層を目指して!

養老川と地層を巡る

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.117 |10 JULY 2018
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#2絵本のなかの景色

 この日は特別に五井駅からも見える車庫に入らせてもらった。創立101年になる小湊鐵道のレールは、なんと明治時代のものもあるという!

汽笛は大正時代のものを使っている。

 人気の「里山トロッコ列車」も見せてもらった。その昔、小湊線で走っていたドイツ製のSLをモチーフに、クリーンディーゼルを搭載して新造した現代版の機関車が牽引する。風や光を感じられるようにオープンに設計されたトロッコは、里山の空気を味わうにはもってこいだ。車両の中に入ると、絵本作家・故かこさとしさんの絵本の世界がディスプレイされている。

 かこさとしさんの作で『小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車』(偕成社)という絵本がある。小湊鐵道と市原の里山と文化を紹介する絵本だ。
 この絵本には制作秘話がある。「里山トロッコ列車」が完成する前のこと、石川社長は、そのパンフレットの装画依頼の手紙をかこさんに送った。当時90歳で、新しい仕事は断っていたというかこさんだが、その手紙を読み、7年もかけた「里山トロッコ」の計画に感心し、引き受けてくれたのだという。それが出版社の目に留まり、絵本として刊行されたのだ。

 そんな絵本のように美しい市原の里山の風景を楽しむために「ドライブと組み合わせて小湊鐵道を使って欲しいですね。今回のルートとは逆に、まずは養老渓谷駅まで車で行って、そこから列車に乗って地層や渓谷を巡るのも楽しいですよ」と石川社長は教えてくれた。

登録有形文化財になっている大正時代の鍛冶小屋。同じく文化財になっている機関庫に接続されている。
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未知の細道 No.117

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。