未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
117

千葉県市原市

千葉県市原市に、世界的に非常に珍しい地層があるという。この地層「千葉セクション」の秘密と、房総半島特有の地質を学びながら、市原の里山をハイキングする。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.117 |10 JULY 2018
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千葉県市原市

最寄りのICから【C4】圏央道「市原鶴舞」を下車

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#1養老川の地層へ!

養老渓谷にある77万年前の地層を目指して歩く!

 昨年の11月以来、千葉県市原市に、世界の地質学関係者たちからの熱い視線が注がれている。市原市田淵地区の養老川にある77万年前の地層、通称「千葉セクション」だ。
 地球の46億年の歴史は、生物の絶滅などその時の特徴的な現象を捉えながら時代区分がなされ、その境界として最も明確にその痕跡が残る場所は「国際標準模式地」(GSSP)として認定されている。これまで世界で約60か所が認定されているが、日本にはまだない。
 「千葉セクション」には、今から77万年前の更新世の前期と中期の境目にあたる地層がある。この時代のものとわかる地層はここ以外では、イタリアの2ヶ所しかない。そして現在この地層が、国際地質科学連合によってGSSPになるかどうか審査されている真っ最中なのだ! 4つある審査のひとつめを昨年末に通過した「千葉セクション」。もし正式にGSSPとして認定されれば、この地質時代区分の名称が千葉時代という意味の「チバニアン」と呼ばれることになるかもしれないのだ。

 これは、今のうちに見ておかないと! そう思った私は、すでに市原に何度も訪れてこの地層を観察している地質や河川の専門家たち、そして専門家と一緒に地形を巡るのが好きな人たちの総勢7人のグループと一緒に、養老渓谷の地層を巡ってみることしたのだった。

小湊鉄道の石川社長。各駅にあるという運行安全を祀った稲荷神社の前で。

 市原といえば、養老渓谷ともうひとつ、忘れてはならない名物がある。五井駅から上総中野駅までをつなぎ、その間ののどかな里山を走るローカル鉄道、小湊鐵道だ。赤が基調のかわいらしい列車、車窓から見える里山の風景、その間に点在するレトロな駅舎。そして桜、菜の花、アジサイ、ススキなど沿線を彩る季節の花々。これらを愛する鉄道ファンは多い。そして昨年末以降は、地層を見にくる観光客も多く乗車している。

 里山の風景をゆっくり眺めるために、今回は始発の五井駅から、田淵地区の玄関口、月崎駅まで小湊鉄道に乗って、そこから「千葉セクション」までをハイキングすることにした。五井駅では小湊鐵道の石川晋平社長が、私たちが待っていてくれた。

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未知の細道 No.117

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。