桜井さんは、将棋駒の将来をどのように見ているのだろう。
「もっと将棋が多くの人に広まったらいいなと思います。駒は結局、その道具ですから。世界戦とか、そういうものができたら面白いですね。囲碁は東アジア大会とかあるんですよ。将棋はまだ国内だけなので、海外の人にももっと知ってほしい」
漫画や映画の題材として将棋に火がついた今、海外への進出も遠くないような気がしてくる。
「将棋の世界というのは、割と根強いファンがいて。特に今の将棋ブームがなかったとしても、簡単に廃れるようなものではないと思います。今はブームだから、一過性の部分もあると思いますけど、今年、将棋を始めた子どもたちがまた強くなっていって……となったらいいですよね」
若手職人として天童と将棋駒業界を担っている、という気負いは桜井さんからは感じられない。駒づくりを始めたときと同じように、ただ目の前の駒と向き合っているだけだ。それでも確かに背負っているものが、桜井さんにはある。
「天童で作ってる駒はいいものなんだよっていうのを、やっぱり見せたいですよね」
そう言って将棋駒を眺める桜井さんを見ていると、なぜか安心した。天童のみなさん、新旧将棋ファンのみなさん、天童の将棋駒はまだまだ、これからです。こんなに天童と、将棋のことを考えている人がいるのだから。
将棋、始めてみようかな。
そうしたら天童に戻ってきて、市内の詰将棋にもチャレンジしてみたい。桜井さんの将棋駒欲しさにそんなことを考えている私は、もう将棋ファンになっていた。
ウィルソン麻菜