未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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将棋ブーム「将棋の街」は今

将棋駒の生まれる街

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.98 |10 September 2017
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#4資料館という名の美術館

資料館は天童駅に直結した建物の1階。隣には飛び込みで将棋をさせる場所も。

 天童将棋駒資料館は、ひんやりとした空気が流れていた。建物の一階部分に、隅から隅までぎっしりと、将棋駒の展示がされている。将棋駒の歴史から始まり、将棋駒の作り方、天童市と将棋駒の関係性までが網羅されている。

 将棋駒は日本のものという感じがするが、遡ると起源はインドにあるそうだ。紀元前300年頃、古代インドにあったボードゲーム「チャトランガ」。様々な形をした立体的な駒を、ルールに従って動かしていく。このチャトランガが元になり、ヨーロッパのチェス、アジアの中国将棋や朝鮮将棋、タイのマーク・ルック、そして日本の将棋となっていったとされている。

 しかし日本の将棋とチャトランガの大きな違いが二つある。駒が立体ではなく、文字で動きが示されていることと、相手の駒を取って自分のものにできることである。この「持ち駒」は、日本の将棋独自のルールだと言われている。

 資料館の奥にある部屋で、私は長い時間を過ごした。それは伝統工芸の将棋駒の作り方の工程をビデオで流している小部屋である。職人たちが、小さな駒をひとつひとつ丁寧に切り出して、整えて、そして文字を書く。その細かな作業から生まれる将棋駒の美しさに、私は人の出入りも気にせず見惚れていた。

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未知の細道 No.98

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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