前日の5月13日、みなかみ町へとたどり着くと、朝から雨が降り始めていた。さすが群馬県最北端で利根川の上流部、まだ肌寒かった。それもそのはず、日陰にはまだ雪がたくさん残っているのだ。
この日もすでにみなかみ町にある二つのダムで、さまざまな行事が予定されていた。「やぎなら」の点検放流に合わせて行われる「藤原ダム」の放流もその一つだ。
さて待ち合わせ場所に三橋さんと5人の女性、そして男性が1人やってきた。女性の一人は澤浦厚子さんといって、みなかみ町の職員だ。今日は一緒にダムを見ながら、みなかみ町を案内してくれるとのこと。
残りの5名の男女は、ライターに、地質学の専門家、エステ経営者、まちづくりコンサル事務所運営をしている人、金融関係にお勤めの人など、かなり様々な職種の人たち。三橋さんも含め、みんな、地形や地質、建築が好きで、「スリバチ学会」というまち歩きの仲間なのだという。中でも最近のみんなのもっぱらの興味はダムである。そこで三橋さんが休みの時はこうやって、みんなでダム見学を楽しんでいる、というわけだ。
さて雨足の強くなった藤原ダムへとたどり着く。藤原ダムはいわゆる重力式と言われるコンクリートダムだ。日本では最も多い型式で、圧倒的なコンクリートの量で、水圧を支えている。そして水をせき止めている部分全体を「堤体」と呼ぶ。
あたり一帯に大きなサイレンが鳴り響き、いよいよ放流が始まった。思えば私はドライブの途中でダム湖を見に来ることはあっても、ダムの放流を見るのも、きちんと「堤体」そのものを見に来るのも、全く初めてのことである。クレストゲートと呼ばれる水の出口から、とめどなく水が吐き出されていく。そして、それは想像以上に壮大な眺めだった。
松本美枝子