そんなある日。深江さんと佐々木さんと一緒に「生地屋さん」に行くことになった。
有田焼は細分化された分業制の上に成り立つ産業である。有田焼といえば有名な窯元(陶磁器を窯で焼いて作り出す所。現在の有田では焼き物の製造会社を指すことが多い)や、美しい絵付けの器をイメージするかもしれないが、「生地屋」もまた、有田焼の分業制を支える大事な職業の一つなのだ。藤さんという、すばらしい技術を持った生地屋さんがいるから、そこを見に行きましょう! と深江さんは熱く語ってくれたのだが、生地屋の仕事について説明を聞いても、なんとなくピンとこない。というか、はっきり言ってよくわからなかった。
一般的に「生地」というと布のことや、ケーキなどお菓子の焼く前の状態のものを指すことが多い。うーむ、つまり「生地」ってことは、焼き物の素材となる陶土を作っているとこなのかな? と私はぼんやり思っていたのだったが、実際、生地屋さんについてみると、その想像が大幅に間違っていることを知ることとなるのだ。
松本美枝子