未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
85

日本陶磁器・発祥の地 有田町に暮らす人々(前編)

陶磁器の町を支える職人さん お隣り同士の生地屋と型屋

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.85 |25 February 2017
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#5生地屋ってなんだ?

磁器の材料となる陶土。私はこれを「生地」だと思い込んでいたのだが……

 そんなある日。深江さんと佐々木さんと一緒に「生地屋さん」に行くことになった。

 有田焼は細分化された分業制の上に成り立つ産業である。有田焼といえば有名な窯元(陶磁器を窯で焼いて作り出す所。現在の有田では焼き物の製造会社を指すことが多い)や、美しい絵付けの器をイメージするかもしれないが、「生地屋」もまた、有田焼の分業制を支える大事な職業の一つなのだ。藤さんという、すばらしい技術を持った生地屋さんがいるから、そこを見に行きましょう! と深江さんは熱く語ってくれたのだが、生地屋の仕事について説明を聞いても、なんとなくピンとこない。というか、はっきり言ってよくわからなかった。

 一般的に「生地」というと布のことや、ケーキなどお菓子の焼く前の状態のものを指すことが多い。うーむ、つまり「生地」ってことは、焼き物の素材となる陶土を作っているとこなのかな? と私はぼんやり思っていたのだったが、実際、生地屋さんについてみると、その想像が大幅に間違っていることを知ることとなるのだ。

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未知の細道 No.85

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。