未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
85

日本陶磁器・発祥の地 有田町に暮らす人々(前編)

陶磁器の町を支える職人さん お隣り同士の生地屋と型屋

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.85 |25 February 2017
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#3Uターンの地域おこし協力隊員

県外から来たインターンの大学生と交流する佐々木さん

 年が明けて2017年、1月。いざ有田についてみると、私のことを出迎えてくれる男性がいた。有田町の地域おこし協力隊の佐々木元康さんである。私の展示制作の仕事における地域プランナーさんだ。つまりはこの町と私をつなげて、私の有田での作品制作を手伝ってくれる、今回の仕事のパートナーなのであった。

 佐々木さんは普段は「春陽堂」という有田町役場のサテライトオフィスにいて、有田への移住・定住を希望する人たちの窓口になったり、「空き家ツアー」なる、移住希望者に町の空き物件を紹介するミッションを日々行っている。実は佐々木さん自身も、東京の大手製薬会社に研究職として勤めていたものの、やっぱり故郷で暮らしたいと会社をやめて妻子を連れて有田へ戻ってきたUターン移住者なのである。空き家ツアーなどの仕事のときには、一人息子の晴人君を連れてくることもよくある。

地域おこし協力隊として、町の人たちと交流スペース作りをする仕事を行っている。

「作品制作のためのリサーチ、なんでも手伝いますよ!」という佐々木さんに私は「この町の歴史や焼き物のこと、それから町に住んでいる人たちとをもっと知り会いたいので、誰か面白い人がいたら紹介してください」と言ってみた。

 すると佐々木さんは「僕も有田に戻ってきてまだ二年目だから、そんなに知っているわけじゃないけれど」といって思いつくまま、有田町のいろんな名士、焼き物関係の人や、有名な窯元、美術館や資料館の学芸員、町の名物おじさんみたいな人まで、いろんな方々の名前をぱぱっと挙げてくれた。

 そして、最後にふと、「あ! 深江さんには絶対に会ったほうがいいかも、有田のことなら、焼き物のことならなんでも知っている、役場のエースです」と佐々木さんは呟いたのだった。

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未知の細道 No.85

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。