年が明けて2017年、1月。いざ有田についてみると、私のことを出迎えてくれる男性がいた。有田町の地域おこし協力隊の佐々木元康さんである。私の展示制作の仕事における地域プランナーさんだ。つまりはこの町と私をつなげて、私の有田での作品制作を手伝ってくれる、今回の仕事のパートナーなのであった。
佐々木さんは普段は「春陽堂」という有田町役場のサテライトオフィスにいて、有田への移住・定住を希望する人たちの窓口になったり、「空き家ツアー」なる、移住希望者に町の空き物件を紹介するミッションを日々行っている。実は佐々木さん自身も、東京の大手製薬会社に研究職として勤めていたものの、やっぱり故郷で暮らしたいと会社をやめて妻子を連れて有田へ戻ってきたUターン移住者なのである。空き家ツアーなどの仕事のときには、一人息子の晴人君を連れてくることもよくある。
「作品制作のためのリサーチ、なんでも手伝いますよ!」という佐々木さんに私は「この町の歴史や焼き物のこと、それから町に住んでいる人たちとをもっと知り会いたいので、誰か面白い人がいたら紹介してください」と言ってみた。
すると佐々木さんは「僕も有田に戻ってきてまだ二年目だから、そんなに知っているわけじゃないけれど」といって思いつくまま、有田町のいろんな名士、焼き物関係の人や、有名な窯元、美術館や資料館の学芸員、町の名物おじさんみたいな人まで、いろんな方々の名前をぱぱっと挙げてくれた。
そして、最後にふと、「あ! 深江さんには絶対に会ったほうがいいかも、有田のことなら、焼き物のことならなんでも知っている、役場のエースです」と佐々木さんは呟いたのだった。
松本美枝子